2017 Fiscal Year Research-status Report
Research related to tax revolt in Denmark
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17K13753
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Research Institution | The Tokyo Institute for Municipal Research |
Principal Investigator |
倉地 真太郎 公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所(研究部), 研究部, 研究員 (60781078)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | デンマーク / 納税者の反乱 / 租税抵抗 / 所得税 / 地方税 / 財政学 |
Outline of Annual Research Achievements |
デンマークにおける「納税者の反乱」について調査・研究を行った。デンマークは他の北欧諸国と同様に高福祉高負担を実現する国の一つである。しかし1970年代初頭、デンマークでは所得税廃止を掲げる反税政党・進歩党が1973年国政選挙で第二政党まで躍進した。デンマークは欧州諸国で最も激しい「納税者の反乱」を経験することになったのである。当年度は、1960年代後半から1970年代初頭にかけての国と地方の所得税制の変化が「納税者の反乱」に与えた影響を分析した。デンマークでは福祉サービスの財源を捻出し、同時に公平な税制を整備するために、1960年代後半から大規模な税制改革が実施された。その結果、税制改革の影響で租税負担は急増したが、租税の抜け穴は放置されたため、低・中所得者の負担が相対的に重くなった。一方で福祉サービスはたらい回しの問題など、不満を抱える市民も多かった。当時の政権はもちろん租税負担がいたずらに増加することを回避しようと、ブラケット・クリープに対する調整や地方政府らへの税率統制を強化するなどしたが、これらの対策は実効性のあるものではなく、納税者や地方政府らの反発を強めることになった。以上の経緯からデンマークにおいて「納税者の反乱」が発生したことを明らかにした。「納税者の反乱」に関する先行研究では、「納税者の反乱」の発生要因が、租税負担だけでなく、税制の負担構造(所得税・資産課税の割合など)の変化が影響していること、福祉サービスにおける受益感の形成が上手くいかなかったことが影響しているといわれてきた。本研究では、デンマークの納税者において最も身近な税の一つである「地方所得税」に着目し、負担の可視性が高いことは因果経路の一つでしかないことを指摘した。以上の研究成果は『都市問題』2018年6月号「デンマークにおける『納税者の反乱』の研究ー地方税制に着目して」で公刊される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、「納税者の反乱」の要因としてあげられる所得税と付加価値税の変化に焦点を絞って研究を進める予定であったが、付加価値税制に関する資料が十分に集まらなかった。デンマークの付加価値税に関しては、先行研究や入手できる政府資料が非常に少ないためである。そこで所得税において国税と地方税の差異に着目しながら分析を行った。当初の計画から変更はあったが、研究成果を公刊(予定)するなど、研究はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
デンマークの付加価値税に関する入手資料が少ない(もしくは入手が難しい)ことが分かった。そのため、付加価値税制の変化が「納税者の反乱」の発生要因としてどう影響を与えたかを分析することは少なくとも次年度中は難しいと考えられる。また、反税政党・進歩党が「納税者の反乱」後、政治過程を通して所得税制にどのように影響を与えたのか(そして与えられなかったのか)、どのような経緯で勢力を失っていったのかという経緯を分析する必要があることを理解した。本研究は、「納税者の反乱」の発生要因だけでなく、その後の経緯にも焦点を充てているからである。今後は付加価値税の資料収集を行いながら、「納税者の反乱」後の反税政党・進歩党の影響と所得税制の変化を分析する予定である。また当初の計画にあった福祉サービス面での影響についても研究成果を出せるように努める。
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Research Products
(1 results)