2019 Fiscal Year Research-status Report
Research related to tax revolt in Denmark
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17K13753
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
倉地 真太郎 明治大学, 政治経済学部, 専任講師 (60781078)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地方税 / 政府間協議制度 / 政府間協調 / 中間団体 / コーポラティズム / 課税自主権 / デンマーク |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は8月にデンマーク・コペンハーゲンで実施した現地ヒアリング調査、9月にスウェーデン・ストックホルムで開催された国際学会(Espanet)への参加、10月に開催された日本財政学会全国大会(横浜国立大学)での発表、『都市問題』12月での論文公刊を行った。具体的には、デンマークにおける「納税者の反乱」の形成メカニズムを明らかにする上で重要と考えられる、地方財政制度について調査研究を行った。デンマークでは強い課税自主権が保障されている一方、各自治体が地方税率を決定する際に、中央政府が地方政府の代表機関と調整を行う。地方政府の代表機関は国と補助金総額の交渉を行い、地方税率の平均変化率の合意を行う。このような高度な調整メカニズムのもとに近年の地方税制の特徴(高率で自治体ごとの多様な税率)が構築されてきた。 2019年度の研究では、1980年代後半に地方税率の平均変化率の調整を行うことの引き換えに、包括補助金によるミクロの財源保障が実現される過程を分析し、それに続く文脈として2000年代以降の緊縮財政下において地方税率の調整に従わない自治体に対する制裁(包括補助金削減)が行われている背景を分析した。デンマークは分権的な地方財政、強固な課税自主権が保障されているといわれるが、実際には個々の自治体の課税自主権は自治体間の調整によって制限されており、特に2000年代以降は国と代表機関との合意によって、制限が強化される傾向にあることを明らかにした。 翻って日本では、近年自治体の財政力格差が拡大していく中、都市部と地方部の税源偏在を是正する措置が繰り返し実施されている。このことは自治体間の協調ではなく、対立を生む要因になっている。本研究は財政の自治と自治体間の財政をめぐる協調関係をいかにして構築していけるのか、という課題を解消する上で一定の示唆があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度はデンマーク・コペンハーゲンでの現地調査、国際学会(Espanet)への参加、日本財政学会での報告、『都市問題』での論文発表等、調査研究と成果発表を有機的に結びつけて行うことができた。ただし、研究機関の変更があったため、研究体制を整えるための時間を要した。また、新型コロナの影響で2020年初頭に当初予定されていた北欧現地調査が中止となった。このような事情から研究成果の総括に向けた準備を十分進めることができていない状況にある。2020年度は研究成果の総括を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナの影響により、2020年度はデンマークへ現地調査に行くことが難しい状況である。既に収集した文献調査やウェブ会議等によるヒアリング調査等を通じて、調査研究を進めていく予定である。具体的に2020年度は1967年度にデンマークで導入された付加価値税の政策過程の研究を行う。デンマークは欧州諸国の中でも早い段階で付加価値税を導入した国の一つであるが、付加価値税導入と所得税の源泉徴収制度の施行が、1970年代前半の「納税者の反乱」の一因になったと考えられるためである。本研究の成果は日本財政学会全国大会などで発表し、『都市問題』等で公刊をする予定である。また、2020年度は本研究課題の最終年度であることから、研究課題の総括として2021年度以降の書籍公刊を目指す。
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Research Products
(3 results)