2017 Fiscal Year Research-status Report
フェムト秒超解像顕微過渡吸収測定装置の開発と有機薄膜太陽電池系への応用
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17K14084
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
片山 哲郎 関西学院大学, 理工学部, 助教 (80592360)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光化学 / 物理化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子受容体分子と電子供与体分子が数十nm程度のサイズで不均一に相分離したバルクヘテロ構造を持つ有機系太陽電池では、実用化の一つの壁といわれた10%を超える光電変換効率が報告されているが、いまだ実用化に至らず、光耐久性の問題と大面積化に伴う光電変換効率の低下の問題を抱えている。その本質的な原因となる化学反応過程は試料の不均一性により明らかでなく、光劣化や大面積化に伴う光電変換効率の低下を抑えるような合理的分子設計指針は提出されていない。本研究はこの不均一性を克服する超解像技術を組み合わせた過渡吸収分光法により、100 nm以下のバルクヘテロ接合層の相分離構造を持つπ共役高分子における電荷捕捉、光退色の反応因子を明らかにし、光耐久性と大面積化に伴う光電変換効率の低下の問題を解決することを目的とし、超解像過渡吸収顕微鏡の装置開発を行った。 2017年度は、顕微鏡下において微粒子のダイナミクスを測定可能な装置を開発し、ペロブスカイトナノ微粒子の溶液におけるダイナミクスを報文した[1]。また研究費で導入した位相変調器を用いた回折光を用いて過渡吸収測定をペロブスカイトナノ微粒子に対して行った。しかし、回折光は通常用いている励起光と比べ50分の1以下の強度であるため、十分な信号強度が得られず、現在、高感度C-MOS検出器を導入することでS/Nを向上し改良している。今後、空間分解能を向上させた装置をもちいてバルク-ヘテロ構造体の有機薄膜試料の測定を遂行していく予定である。 1.Unravelling the ultrafast exciton relaxation and hidden energy state in CH3NH3PbBr3 Nanoparticles T. Katayama, et al [JPCC,122(2018),5209-5214.]
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本助成費で一年間の「構造化照明を用いたフェムト秒・ナノメートルの時空間分解能を有する超解像顕微過渡吸収測定装置の開発」の研究を行った。 2017年度には、測定試料の選定のため、いくつかの半導体微粒子試料系にて測定を行い、その結果、比較的信号強度の強いCH3NH3PbBr3微粒子系では、研究成果論文に示すように顕微鏡下で単一微粒子においても信号が検出可能であった[溶液中の励起子ダイナミクスについてはJPCCに受理]。2018年度では、位相変調器を導入し、いくつかの基礎データを取得した。 超解像技術としてはまだ回折限界を超えておらず、手法の確立まで到達していない点として問題があるものの、一方で顕微鏡下における単一微粒子の光励起ダイナミクスを観測可能となったという点では、測定技術的な面から評価に値する研究であったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、顕微鏡下における光ポンプ・プローブ法を用いて、構造化照明法を導入し、その空間分解能の向上を目指した。 超解像用の空間位相変調器を用いて、励起光の位相変調までは行えたが、信号のS/N比の問題で、過渡吸収信号の超解像技術までには及んでいない。 S/N比向上の方針として、現在の問題点としては、 ①検出器の暗電流の大きさ。信号に対して暗電流が100分の1程度あるため、この暗電流を除く必要がある。対応として今後はさらに高感度の検出器を導入し、信号のS/N比を向上させていく。 ②測定時間の短縮化。測定時間が長くなるにつれ、本実験手法では、複数枚の画像データを取得し、その後その画像データから回折限界を超えた超解像画像を取得する。現在の1枚の画像取得に要する時間が1分程度であるが、その間に励起光の揺らぎなどがあるため、高速でデータ取得する必要がある。対応としては、さらに高速にデータを読み込み可能な検出器を用いて、光源の揺らぎを抑制する。 今後はこれらの点を改善し、微小領域における光化学反応ダイナミクスの解明へと応用していく予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度では、研究遂行に必要なレーザーの電源回路が不慮に故障し、この修理費として出費がかかってしまった。そこでこの出費の残額を旅費として賄うためには足りなかったため、次年度の旅費として使用計画を変更した。
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Research Products
(1 results)