2020 Fiscal Year Research-status Report
Research on transition phenomena in nonlinear dispersive equations
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17K14219
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
眞崎 聡 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20580492)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 分散型方程式 / 散乱問題 / 非線形シュレディンガー方程式 / 非線形クラインゴルドン方程式 / 方程式系の標準化 / 長距離散乱 / 遷移現象 / 定在波解の安定性解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、長距離散乱理論の研究において大きな進展が得られた。方程式系は、単独方程式に比べて方程式として複雑であるので、単独方程式では見られない解の振る舞いがあり得ることが期待される。実際に、そのことを示唆する例がいくつか知られていた。しかし、これまではそのような特殊な具体例を個別に調べるのが主であり、それらの全体像の把握、つまり方程式系のもつ振る舞いがどれくらいあり得るかについては、ほとんど理解されていなかった。 我々は、方程式系の標準化の理論の構築に成功した。これは、システムを解の振る舞いによって分類することができるもので、方程式系の解の振る舞いの全体像の把握における有力な方法となると予想される。実際に、この標準化理論によって、特定の範囲にある非線形クラインゴルドン方程式系の解を完全に分類することができ、それによりこれまでに知られていなかった新しい方程式系を複数見つけることができた。この結果は、現在投稿中である。 一方で、遷移現象ならびに安定性理論の研究においては、今年度中には大きな進展は得られなかった。しかし、これまでの成果をまとめたいくつかの論文が今年度中に出版された。遷移現象については、方程式系の解析に関する論文が出版された。質量劣臨界の非線形シュレディンガー方程式系を扱い、方程式系ならではの新しい知見が得られている。さらなる発展が期待できる。安定性理論の研究については、デルタポテンシャルをもつ方程式の小さい定在波解の漸近安定性を示すことができた。これは、この次に続く「小さくない定在波解」の研究へと既に進展しているものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
長距離散乱の研究については予想外の大きな成果が得られた。進展が得られそうなことが判明してからはこの研究に注力したため、遷移現象と安定性理論の研究においては、期待したほどの進展が得られなかった。全体としては少し遅れている。 遅れに関しては、研究環境の大きな変動があったことにも原因がある。研究外の様々な業務をオンライン主体に変更するために時間がとられ、研究に費やせる時間が予定より少なくなった。また、研究打ち合わせや研究集会はオンライン主体となった。対面でのそれらよりもやや効果が劣ることが判明した。このような研究を効果的に進めてくれる要素が弱くなったことも研究の進捗が遅くなる一因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
長距離散乱における方程式系の標準化理論はさらなる発展が見込めるため、この部分に集中してリソースを割くように方針を変更する。長距離散乱理論におけるさらなる進展が見込めるだけでなく、漸近挙動の解析以外の様々な場面での応用があるように思われる。それらの応用についても可能性を追求する。 遷移現象と安定性理論の研究に関しては、昨年度の計画を引き継ぐ。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた研究集会のすべてがオンラインに変更された。旅費として使用する予定であった費用で、オンライン環境への対応を行ったが、それらに差額が生じたため。
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Research Products
(7 results)