2017 Fiscal Year Research-status Report
Realization of Kondo spin-liquid state and study of their physical properties
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17K14342
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
小林 理気 琉球大学, 理学部, 助教 (40614673)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 磁気構造の決定 / 単結晶育成条件の決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では目的遂行のため,1.Ce5Si3の純良単結晶の育成,2.Ce4XSi3(X=non-magnetic)の新規単結晶試料の探索,3.中性子散乱実験によるダイマー形成の微視的な評価,4.圧力下電気抵抗・磁化率測定による圧力誘起相の探索の4つを進めている.当該年度では1と3を進めることができた.まず,1では様々な試料育成条件の検討を行い,最大1cm角の単結晶試料の育成に成功した.また,-1.5℃/h以上の育成速度ではCe5Si3は骸晶を形成することを明らかにした.得られた単結晶は単結晶X線回折実験を行い,単相の純良な目的物質が得られていることを確認した.これらの単結晶試料の磁場中比熱測定を行い,転移温度や開放エントロピーが先行研究とよく一致していることを確かめた.以上の実験結果から,本研究によってフラックス法によるCe5Si3の単結晶育成方法が確立されたと言える.3では1で得られた単結晶を粉末化した物を用いて,オーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)にあるOPALに設置されたSIKAという分光器を用いて粉末冷中性子弾性・非弾性散乱実験を行った.実験では転移温度以下で明確な磁気散乱ピークが観測され,解析の結果,Ce1サイトだけが磁気秩序を示すモデルで実験データを説明できることを明らかにした.これはCe1サイトだけが磁気秩序を示し,Ce2サイトが低温までフラストレーションにより磁気秩序を示さないとした我々が提案しているモデルを微視的に裏付けた結果と言え,その意義は極めて大きい.しかし一方で,Ce5Si3の粉末化による急速な酸化の影響により,非弾性散乱実験では明確なスピンギャップを観測することができなかった.現在単結晶での実験に切り替えて研究を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で上げた目的遂行のための4つの項目について,2つを進めることができた.中性子散乱実験に関してはCe5Si3の予想以上の易酸化性により,目的の1つであるスパンギャップの直接観測には至らなかったが,すでに表面積が小さく酸化し難い単結晶試料での中性子散乱実験を今年度前半に計画しており,研究の遅延は予想の範囲内であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究実績の概要で上げた残りの2と4,また単結晶試料での中性子散乱実験を進める.2に関しては既に置換非磁性候補物質を4つに絞っており,現在単結晶の育成に取り掛かっている.4に関しては圧力下磁化率測定を行うために必要な全ての備品及び試料の整形が完了しており,今後圧力印加実験を進めていくこと計画している.
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Causes of Carryover |
実験用備品の仕様の選定が実験結果に依存する事がわかったので,一部購入予定の備品を次年度に購入することにしたため.
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Research Products
(4 results)