2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of a knee joint ligament rupture simulator based on mechanical loads and geometric conditions
Project/Area Number |
17K14554
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
武田 量 北海道大学, 工学研究院, 助教 (90645095)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 膝関節 / 靭帯線維束 / 断裂 / 引張荷重 / 過負荷 / サイクル試験 / 有限要素法 / シミュレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度,本研究では力学負荷条件と形状に基づいた膝関節靭帯断裂メカニズムを解析した.主に研究計画書で記載した A)膝関節靭帯断裂再現装置の構築と B)靭帯組織断裂を引き起こす引張荷重とねじりを特定の調査目的に従事した. まず,研究目的 A)に関しては,万能材料試験機(島津製作所製),力覚センサ(ワコーテック製),膝関節固定用治具,恒温高湿庫(エスペック製)からなる膝関節靭帯断裂再現装置を作成した.膝関節固定用治具に膝モデルを設置し,恒温高湿庫内で試験を行うことで膝モデルの時間経過劣化を防ぎ,万能材料試験機と関節固定用治具間には力覚センサを介し荷重を測定可能とした. 次に,研究目的 B)に関しては,膝関節に存在する4つの主要靭帯線維束[前十字靭帯(ACL),後十字靭帯(PCL),外側側副靭帯(LCL),内側側副靭帯(MCL)]が断裂する際の力学条件特定の実験を実施した.本研究ではヒト膝関節と寸法・構造が近いことからブタ後膝関節(ホクレン農業協同組合連合会より購入)を代替モデルとして用いた. 新鮮凍結されたブタ後膝の半月板,4つの主要靭帯線維束を残し他の軟組織は切除した.膝モデルの膝屈曲角度90degで固定した状態で実験装置に設置し,靭帯断裂を引き起こす条件として,過大な変位(±7.5mm,±10mm)と繰返し負荷(±5mm変位,1000サイクル)が靭帯の力学特性に及ぼす影響を調査した.結果,膝靭帯に過大な変位負荷を与えた前後では,それぞれ約30%(±7.5mm)及び約35%(±10mm)引張荷重が低下した.また,繰返し負荷を与えた場合膝靭帯の引張荷重は約20%低下した.また,単一靭帯膝モデルを用いて測定した結果,これらの引張荷重低下の要因はPCLに起因することが確認された. 来年度は,得られた成果を国内外の学術講演会で発表すると共に研究計画の残りの項目を計画的に進めて行くものである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は主に研究実施計画の A)膝関節靭帯断裂再現装置の構築に従事していた.試験機は,万能材料試験機(島津製作所製),力覚センサ(ワコーテック製),膝関節固定用治具,恒温高湿庫(エスペック製)から構成されている.装置自体の設計開発は概ね終了し,最後に恒温恒湿庫内部の加工が残されている.こちらの恒温恒湿庫内部の加工が申請時の想定より複雑な構造となったためより多くの時間を必要とした. 力学負荷試験機の作成中,まず靭帯組織断裂を引き起こす力学条件を特定するための実験を開始した.主に研究目的 B)靭帯組織断裂を引き起こす引張荷重とねじりを特定の調査項目に該当する.実験ではブタ後膝関節を用い,過大な変位(±7.5mm,±10mm)と繰返し負荷(±5mm,1000サイクル)を与えた.これらの負荷を与える前後の膝靭帯の引張荷重の差を測定した.結果,過大な変位を膝靭帯に与えた場合,引張荷重は約35%減少したのに対して,繰返し負荷を与えた場合支持力の減少は約20%に留まった.したがって,繰り返し負荷よりも一度の過度な変位が靭帯の引張荷重の低下に寄与することが確認された.つまり,靭帯線維束に与える損傷の影響が大きいと考えられ,断裂を引き起しやすくなると考えられる.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画書に記載した以下の項目を計画的に進めて行くものである.また,得られた成果を国内外の学術会議で発表すると共にインパクトファクターのついた学術誌に投稿する予定である. C)高サイクル負荷試験が靭帯の支持力及び自由度に及ぼす影響:膝関節モデルに繰り返し負荷試験を行った後に起こる支持力変化を計測する. D)膝関節靭帯断裂シミュレータの構築:各靭帯線維束の形状と物性値を考慮し,断裂の様子を再現する.
|
Causes of Carryover |
(理由) 本年度は主に計画通りに経費を使用したが,膝関節靭帯断裂再現装置の構築に必要な治具作成費が想定よりも少なく済んだ.また,予定していた実験消耗品及び実験試験片(ブタ膝モデル)が計画より少なく済んだため,244,964円が次年度使用繰り越しとなったものである. (使用計画) 次年度の研究計画が本年度より多くの実験を行う予定のため,実験用消耗品及び実験装置治具の追加加工費用に使用する.
|