2018 Fiscal Year Research-status Report
Invention of active morphing smart surface created by additive manufacturing
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17K14577
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村島 基之 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70779389)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スマートサーフェス / 摩擦制御 / 流体潤滑 / 機械学習 / 損傷部回避 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,表面が変形するという申請者が開発した新しい構造を用いることで,これまでにない能動的な摩擦制御を可能とするスマートサーフェス材料の創製を目的として実施されている.2018年度の研究成果として,これまでの樹脂材料に代わる薄肉金属による変形性表面を開発することに成功した.今までは樹脂材料が油に溶解してしまうという点が課題であったが,この成果により一般的な潤滑油中での使用が可能となり,潤滑状態におけるスマートサーフェス材料の摩擦特性を明らかにすることが可能となった.結果として,特定のすべり速度条件下において,変形部形状を凹にすることでフラット試験片の摩擦係数よりも摩擦係数を小さくし,また,変形部形状を凸にすることでフラット試験片の摩擦係数よりも大きくするという摩擦の能動的制御が可能であることが明らかとなった.スマートサーフェスを用いることで摩擦係数を変化させることは研究当初より期待していた効果であるが,従来の表面よりも摩擦係数を低下させることも可能であることが示されたことで,開発中のスマートサーフェスの優れた性能が示された. 「多数の変形部の独立制御による摩擦制御」に関しては,遺伝的アルゴリズムを基としたプログラムの作成を完了した.この新規開発したプログラムは,相手平面に損傷部が存在する状況において,その部分を回避するように変形部を制御するものである.このプログラムを用いることで相手平面上に存在する損傷部が1つの場合には,学習が進むにつれて完全に損傷部を回避することが可能になり,さらに平均的な摩擦係数自体を低下させることにも成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度の研究では,油潤滑中においても実用に耐えうる薄肉金属スマートサーフェスの開発を達成した.これにより流体潤滑中におけるスマートサーフェスの摩擦挙動を明らかにすることに成功した.結果として,特定のすべり速度条件下において,変形部形状を凹にすることでフラット試験片の摩擦係数よりも摩擦係数を小さくし,また,変形部形状を凸にすることでフラット試験片の摩擦係数よりも大きくするという摩擦の能動的制御が可能であることが明らかとなった.フラット試験片の摩擦係数を含んだ範囲での摩擦係数の制御は,かなり挑戦的な目標であったが,変形部形状や加える圧力を工夫することでそれが達成された意義は非常に大きい.従って,当初計画と比較して十分な目標が達成されている. 当初は2018年度に製作・試験を実施する予定であった「多数の変形部の独立制御による摩擦制御」に関しては2017年度より開発に着手できていた状態であった.2018年度中の開発完了を目標に進めていたが当初の計画よりも早く開発が完了し,その摩擦制御性の解明および改善方法の考案まで着手できている状況である.摩擦制御性に関しては,相手面損傷部が一つの場合にはそれを完全に回避し,摩擦係数を安定化させるアルゴリズムをすでに完成させることに成功した.加えて,「学習の収束性」や「摩擦係数または損傷部回避どちらを重視するか」などの設定パラメータが結果にどのような影響を表すかなどの基礎データの取得をすでに開始している状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の大きな成果は,「薄肉金属スマートサーフェスの開発の達成」「流体潤滑中において変形部形状を制御することで幅広い摩擦係数に制御することが可能であることが示された」ことと「相手面の損傷部回避および摩擦の安定化のための変形部の独立制御プログラムを完成させ,損傷部が一つの場合には完全な回避に成功した」ことの3点である. まず,流体潤滑中においては幅広い範囲での摩擦制御可能性が示された.一方で,それがどのようなメカニズムによりもたらされたかは現在不明である.本研究における摩擦条件における潤滑状態は境界潤滑から混合潤滑の状態であると考えられる.また,得られたストライベック曲線より考察するとスマートサーフェスを用いることにより基本的には境界潤滑状態側に遷移することが考えられる.従って,固体同士の直接接触の度合いを測定することにより実際の潤滑状態を明らかにすることが可能であると考えられる.今後は,スマートサーフェスの変形時の真実接触面積の変化を測定することにより摩擦制御メカニズムの解明に挑戦する. 「多数の変形部を有するスマートサーフェスの変形部独立制御による摩擦制御手法の確立」に関しては,今後複数の損傷部が相手面に存在する場合における回避性能や学習の収束性を明らかにする.具体的には,損傷部を二ヵ所,三ヵ所と増やすことにより,そもそも現状のプログラムで完全な回避が可能であるのかを確認する.完全な回避が可能である場合には,損傷部が増えることにより学習にかかる時間がどのように変化するかを明らかにし,それを短縮するための最適パラメータ設定の指針を得る.また,完全回避が現状のプログラムで難しい場合には,統計的な接触確率の数学的な計算を実施し,発散してしまう原因を明らかにする.その結果を用いた収束性に優れたアルゴリズムパラメータや適応条件の見直しにより完全回避可能性を示すことを目標とする.
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Research Products
(3 results)