2017 Fiscal Year Research-status Report
マラリア原虫におけるrho0細胞を用いた人工ミトコンドリアDNAの導入
Project/Area Number |
17K15676
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
彦坂 健児 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任講師 (30456933)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マラリア原虫 / ミトコンドリアDNA / 組換え / rho0細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリアを引き起こすマラリア原虫は、生物界で最小の6 kb のミトコンドリアゲノム(mtDNA)を有す。この6 kb の非常にコンパクトなmtDNA は3つのタンパク質遺伝子をコードしていることが知られているが、これらのミトコンドリア(mt)遺伝子の転写・翻訳様式、高度に断片化されたmt rRNAの機能性、ミトコンドリア内で使用されるtRNAはどこからくるのか、などの基本的な部分はよくわかっていない。これは、従来の遺伝子操作技術ではマラリア原虫のmtDNA の組換えができないことがその要因の一つである。本研究はマラリア原虫mtDNAの解析を可能とするために、mtDNA を消失させた細胞(rho0 細胞)をマラリア原虫で作製し、人工mtDNA を遺伝子銃で導入するという方法で、mtDNA“入れ替え”技術の確立を目指している。今年度は、マラリア原虫rho0細胞の樹立に向けた実験を実施した。まず、in vitro培養のヒトマラリア原虫(Plasmodium falciparum 3D7株)においてmt遺伝子のシトクロムbを標的とした抗マラリア薬(アトバコン)に耐性を持つことが報告されている酵母の細胞質型ジヒドロオロト酸脱水素酵素(yDHODH)遺伝子組換え原虫株を、げっ歯類マラリア原虫(P. berghei ANKA株)を用いて作成した。この原虫株のアトバコン耐性について調べたところ、ヒトマラリア原虫とは異なり、耐性が賦与されないことがわかった。この結果より、原虫種および原虫の増殖条件の違いによって、DHODHおよびミトコンドリア内の酸化的リン酸化の重要度が異なることが予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、yDHODH組換えマラリア原虫の作製およびその表現型の確認までを行った。文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクト酵母遺伝子資源センター(大阪大学大学院工学研究科酵母リソース工学寄付講座)より出芽酵母(BY137)の供与を受け、酵母の細胞質型DHODH遺伝子をPCR によって増幅した。ベクターとなるプラスミドにyDHODH遺伝子のPCR産物を挿入し、大腸菌によるサブクローニングを行った。プラスミドを精製後、遺伝子導入装置によってP. bergheiの核ゲノムへの相同組換え(nucleofection)を行い、マウスに感染させた後、組換え原虫の株化を行った。yDHODH の発現はmRNA によって確認した。しかしながら、この組換え原虫株はアトバコンに感受性をもつことがわかった。このことより、マウス感染マラリア原虫では、ヒトマラリア原虫のin vitro培養と栄養などの条件が異なるため感受性の違いが出たものと考え、感染マウスにグルコースを投与するなどの飼育条件の検討を多く行った。そのため、研究の進捗は当初の計画よりもやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験結果によって、げっ歯類マラリア原虫P. bergheiにyDHODH遺伝子を組換えても、アトバコン耐性の状態を作り出すことが困難であることがわかったため、まずは、げっ歯類マラリア原虫の他の種(P. yoeliiやP. chabaudiなど)でのyDHODHの組換えを検討する予定である。また同時に、 既にアトバコン耐性が賦与されるとの論文報告のあるヒト熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum 3D7株)を用いたin vitro 培養での検討を行うべく準備を進めている。アトバコン耐性の組換え原虫株が得られた時点で、エチジウムブロマイド(EtBr)を用いたmtDNA 消失細胞(rho0細胞)の作製に向けたEtBr濃度の検討を実施する。ここで、マラリア原虫rho0細胞が認められない場合は、エンドヌクレアーゼをミトコンドリア内で発現させる方法など、EtBr を用いた方法以外のmtDNA 消失法についての検討を予定している。
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Research Products
(2 results)