2017 Fiscal Year Research-status Report
CD69-Myl9システムによる新規炎症制御機構の解明
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17K15715
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
林崎 浩史 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (50779907)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | CD69-Myl9システム / Myl9 nets / 血管内腔 / 抗原提示細胞 / DSS誘導性大腸炎モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が新たに同定することに成功したCD69リガンドであるMyl9は、アレルギー性気道炎症肺の血管内腔に網目状構造(Myl9 nets)を形成し、CD69陽性の炎症細胞が炎症組織へ移行するためのプラットホームとして働いていることが考えられる(CD69-Myl9システム)。しかし、炎症細胞がCD69-Myl9システムを介して炎症組織へと移行するには、炎症細胞が炎症組織の血管内腔にてCD69を発現することが必須条件であるが、これまでその発現機構は明らかになっていなかった。本研究により、我々は卵白アルブミン(OVA)誘導性アレルギー性気道炎症モデルマウスの肺組織の血管内腔に、MHCクラスⅡ陽性の抗原提示細胞の局在を見出した。また、蛍光標識したOVA抗原を用いて気道炎症を誘導したところ、血管内腔の抗原提示細胞は、経鼻的に投与した蛍光OVA抗原を保有することを明らかにした。つまり、これらの細胞が血管内腔で炎症細胞へ抗原提示を行うことでCD69の発現を誘導している可能性が示唆された。他の炎症性疾患におけるCD69-Myl9システムの関与を明らかにする為、我々は炎症の誘導にCD69が関与するデキストラン硫酸(DSS)誘導性大腸炎マウスモデルを用いて解析を行った。DSS投与後のマウス大腸組織におけるMyl9の発現ならびにその局在を解析したところ、炎症に伴い大腸血管内腔にMyl9 netsの局在を見出した。この結果は、Th1やTh2反応などの炎症反応のタイプに依存するものではなく、血管障害を伴う幅広い炎症反応においてCD69-Myl9システムが関与する可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究では、我々が新たに提唱した新規の炎症制御システムである“CD69-Myl9システム”の総合的な理解を目的としている。平成29年度の研究成果より、炎症肺血管内腔において炎症細胞上にCD69発現を誘導する担当細胞として、抗原を保有したMHCクラスⅡ陽性細胞の存在を見出すことが出来た。血管内腔に局在し、外来抗原を保持した抗原提示細胞についての研究報告は少なく、重要な知見を得られたと考えている。共焦点レーザー顕微鏡の解析により血管内腔に形成されたMyl9 nets上に抗原提示細胞が局在する結果も得られており、CD69-Myl9システムは単に炎症細胞の組織移行・維持のみならず、これまで認知されていなかった血管内腔での免疫反応を担う重要な機構である可能性が示唆された。さらに当年度では、これまで解析に用いてきたアレルギー性気道炎症モデル系ではなく、新たにDSS誘導性大腸炎モデル系を立ち上げることで、アレルギー性気道炎症とは別の炎症性疾患の炎症誘導におけるCD69-Myl9システムの関与を解析することが出来た。そして、DSS投与後のマウス大腸組織中の血管内腔を解析したところ、期待通り、Myl9 netsの形成を確認する事ができた。CD69欠損マウスでは、DSS誘導性の大腸炎が著しく抑制される結果と合わせ、大腸炎の誘導においてCD69-Myl9システムが中心的な働きを成すことが考えられる。これらの結果から、上気道性炎症疾患の新規治療ターゲットとして報告した当システムが、潰瘍性大腸炎の新規治療法として期待できる可能性を得ることができた。 以上の結果より、当申請研究は交付申請書に沿って着実に遂行されており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)炎症性T細胞が血管内腔でCD69を発現する機構:主に共焦点レーザー顕微鏡を用いることで、Myl9 netsに局在し、抗原特異的T細胞を活性化しうる、抗原を保持した抗原提示細胞を明らかにする。具体的には、抗原提示細胞に取り込まれた際に蛍光を発する抗原であるDQ-OVAをOVAで免疫したマウスに経鼻投与することで気道炎症を誘導し、Myl9 netsに局在するDQ-OVA陽性細胞の表面マーカーを同時に染色することで担当細胞を同定する。同定後は、その細胞が実際に抗原特異的T細胞上のCD69を誘導するかをin vitro共培養系により明らかにする。また、この共培養系の際に、抗原提示細胞が産生するサイトカインを同定することで、サイトカインを介するCD69誘導機構の可能性も同時に解析する。 2)Myl9 nets形成メカニズム:Myl9 netsは血小板から産生された構成要素で形成される血栓様構造体である。生体内で形成されたMyl9 netsが一般的な血栓と同一のものかを明らかにするため、in vitroで作成した血小板血栓の凍結切片を作成し、Myl9の局在ならびに構成物の比較を共焦点レーザー顕微鏡解析により実施する。 3)各種炎症性疾患におけるCD69-Myl9システムの関与 Myl9 netsの形成が観察されたDSS誘導性大腸炎モデルを用いて、抗Myl9/12抗体投与による炎症の抑制効果を検討する。具体的には、まず、Myl9 netsの形成時期をDSS投与開始から継時的に組織学的解析を行うことで明らかにする。そして、抗体投与時期を変えることにより、大腸炎の予防効果及び治療効果を検討する。炎症に伴ったMyl9タンパク質の増減に関しては、DSS投与後、継時的に組織ライセートを作成しウェスタンブロットによる解析を行う。
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Research Products
(6 results)