2017 Fiscal Year Research-status Report
ステロイドが与える免疫チェックポイント阻害剤による抗腫瘍免疫応答への影響
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17K15738
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
前田 優香 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (20757223)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント阻害剤 / ステロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫を賦活化し自身の免疫によりがんを駆逐しようという免疫療法の一つである、免疫チェックポイント阻害剤は一部のがん患者で目覚ましい効果を発揮している。しかしながら、免疫チェックポイント阻害剤は体内での免疫恒常性のバランスを変化させることから重篤な副作用が生じるケースがあり、副作用のコントロールも重要な課題の一つである。特に自己免疫疾患関連副作用(immune related adverse event: irAE)が発症すると稀に劇症化する。irAEに対しては免疫抑制剤であるステロイドの投与がなされる。ところが、これまで免疫チェックポイント阻害剤が誘導した抗腫瘍免疫応答に対するステロイドの影響について詳細な検討は行われていない。本研究では、実臨床では漫然とステロイドの投与がされているものの、その効果ゆえに詳細な検討がなされてこなかったステロイドの抗腫瘍免疫応答に与える影響を明らかにする。本研究代表者はすでに純系マウスモデルにおいて、免疫療法(抗体投与)後腫瘍拒絶した個体へステロイド投与すると腫瘍が増悪することを観察している。これは、ステロイドが賦活化された抗腫瘍免疫に対してなんらかの影響を与えていることを示唆している。本研究では、さらに腫瘍局所に浸潤したリンパ球を詳細に検討し、ステロイドがどのように抗腫瘍免疫応答へ影響を与えているのかを明らかにする。当該年度においては、マウスモデルを用いてステロイドの投与量・投与時期を比較したところ、ステロイドを早期(腫瘍担がん後3日目)から投与した場合、ステロイドの容量依存的に腫瘍の増殖が観察された。一方で腫瘍担がん後17日目以降では、高容量・低容量でも免疫チェックポイント阻害剤により惹起された抗腫瘍免疫応答へ影響を与えないことが明らかになった。さらに、がん抗原特異的CD8陽性T細胞の誘導効率にも影響を与えていることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究代表者らは、すでに純系マウスモデルにおいて免疫療法(抗体投与)後腫瘍拒絶した個体へステロイドを投与すると腫瘍が増悪することを観察しており、この結果はステロイドが賦活化された抗腫瘍免疫に対して何らかの影響を与えていることを示唆している。当該年度では、ステロイドの投与量・投与時期を変えることによりステロイドが作用する時期(抗腫瘍免疫応答の誘導時期を鑑みて)を明らかにした。また、NY-ESO-1特異的CD8陽性T細胞の誘導効率も容量・時期に依存的であることも見出した。また、NY-ESO-1特異的CD8陽性T細胞の詳細な検討を行ったところCD127hiのメモリープレカーサーが特にステロイドの影響を受けている可能性を示唆する結果を得た。今後は、ステロイドが特に影響を与えている細胞群・シグナル経路、また代謝経路の変化などマスサイトメトリーやフラックスアナライザーを用いて詳細に検討を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、マウスモデルより得られたデータと臨床データ:早期ステロイド投与群vs後期ステロイド投与群において無増悪生存期間(PFS : progression-free survival) や全生存期間(OS : overall survival)を比較して、実臨床においてもステロイドが免疫チェックポイント阻害剤が惹起した抗腫瘍免疫応答に影響を及ぼしていることを明らかにする。
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