2018 Fiscal Year Research-status Report
医療における良心的拒否を通じた権利擁護の射程と限界に関する日米比較調査
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17K15749
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Research Institution | Ishikawa Prefectural Nursing University |
Principal Investigator |
加藤 穣 石川県立看護大学, 看護学部, 准教授 (20727341)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 良心的拒否 / 治療拒否 / 自己決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は医療・公衆衛生における良心的拒否に関する(i)文献・判例検討、(ii)社会調査、(iii)比較・総合をその内容とし、当初計画においてはとりわけ脳死判定・ワクチン接種・輸血に対する拒否の問題を念頭に置き、類似の事例についてはこれらについての研究と並行して探索しながら検討をすることとしていた。この当初計画とは順序が前後することになったが、関連する報道があり社会的要請が高いと考えたため、第2年度においては問題意識を拡大し、非標準的治療を選択して標準的治療を選ぶという事象について調査・検討をおこなった。2018年度はフランスの研究者を中心とするグループと隔年で開催している国際会議の第8回大会を運営する立場にあったため、自身が主に文献を用いて伝統医療などの非標準的治療を選択して標準的治療を選ぶという事象について調査しただけでなく、著名な複数の研究者に最新の状況・問題点等についてこの機会に報告を依頼し、最新の知見の提供を受け、また、意見を交換することができた。Kato, Y "Complementary but not alternative: grounds for rejecting conventional medicine based on literature search"VIII French-Japanese International Bioethics Conference 2018.8. (VIII French-Japanese International Bioethics Conference Abstract Book p.20 2018) および Yu, L and Kato, Y. Traditional medicine practiced by Mongolian race, VIII French-Japanese International Bioethics Conference 2018.8. (VIII French-Japanese International Bioethics Conference Abstract Book p.18 2018) と題する発表を行った。前者は伝統医療などの非標準的治療を選択して標準的治療を選ぶ理由・根拠を文献から検討したもので、現在、この発表の論文化に取り組んでいる(論文タイトルは未定)。論文として公表されれば治療拒否の問題に対処する基礎資料となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は医療・公衆衛生における良心的拒否に関する(i)文献・判例検討、(ii)社会調査、(iii)比較・総合をその内容とし、 (i)(iii)では主に文献研究が、 (ii)では社会調査を予定している。初年度は(i)を中心に行い、並行して(ii)の準備を行うとしており、第2年度は (ii)を中心に行うことは当初の予定としていたが、上述したとおり、扱う問題を伝統医療などの非標準的治療を選択して標準的治療を選ぶという事象にまで拡大したため、この論点に対する進捗とのトレードオフにより(ii)が十分進まず、在外研究については2018年度内にスケジュールを設定することができなかった。また、投稿していた論文が、諸般の事情により再投稿の日程に間に合わず辞退扱いになったため、現在再度投稿しなおしているところである。加えて、上述した通り、学会発表の内容については現在論文執筆を行っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究のスケジュールとしては、今年度は2018年度に本来実施予定であった部分を含めて研究を実施する予定である。当初の研究計画とは重点が変化したため、在外研究については2018年度内にスケジュールを組むことができなかったことは上述したが、この準備を進めていく。研究内容については、当初計画が想定していた以上に普遍的な側面(第2年度に重点的に研究を遂行した部分)が存在することを踏まえて研究を遂行する。より具体的には、脳死判定・輸血・ワクチン接種が良心に基づいて拒否されることがあるが、これ以外についても、患者等が自身の信念や判断に基づいて標準的医療等を拒否することがある。本研究は特に日米でのこうした医療における(良心的)拒否のあり方を比較しながらめぐって、医療者によるアドホックな対応・通底する考え方、良心と自己決定の関係性、公衆衛生との相克を精査し、医療における良心的拒否、ひいては社会文化的要因の限界と射程、すなわちそれが果たすべき(でない)役割を解明すること、それにより、国際化の時代に特定の医療行為を拒否または躊躇する患者や医療者にどのように対処すべきかという問いに答えることを目標としているので、これらの論点について調査・検討を進める。
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Causes of Carryover |
本研究は医療・公衆衛生における良心的拒否に関する(i)文献・判例検討、(ii)社会調査、(iii)比較・総合をその内容とし、 (i)(iii)では主に文献研究が、 (ii)では社会調査を予定している。初年度は(i)を中心に行い、並行して(ii)の準備を行うこととし、第2年度に (ii)を中心に行うことは当初の予定としていたが、上述した通り、扱う事象を拡大したため、その分(ii)が十分進まず、在外研究については2018年度内にスケジュールを組むことができなかった。このためこの点で支出が減ったが、他方で国際会議の開催、その際の専門知識の提供、また、研究の再現性を高めるためのソフトウェアを用いた研究の習熟のための支出が当初の予想を上回ったため、合計額としては予定していた使用額との差が生じた。上述(ii)の調査等を最終年度に組み込むことで差額も使用する予定である。
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Research Products
(3 results)