2017 Fiscal Year Research-status Report
放射線による細胞損傷をタウリンが緩和する分子機構の解明
Project/Area Number |
17K15809
|
Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
山下 剛範 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 准教授 (10410937)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 放射線 / タウリン / タウリントランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、「細胞外タウリン濃度の量的変化と放射線による細胞損傷の緩和につながるタウリントランスポーター発現の量的変化」を明らかにすべく、マウスを用いて病理組織学的分析を行った。 実験群はコントロール, 7Gy照射群, 7Gy照射+タウリン3000mg/Kg投与群, 4.5Gy照射群, 4.5Gy照射+タウリン3000mg/Kg投与群, 照射群, 4.5Gy照射+タウリン1500mg/Kg投与群とした。タウリンは放射線全身暴露後に毎日研究終了まで投与した。生存率と小腸組織中のタウリン局在及びタウリントランスポーター発現を病理組織学的手法により、細胞外タウリン濃度との関連を組織学的に比較し解析を行った。 生存率に有意な変化は認められなかった。コントロールに比較し、7Gy照射によりタウリン局在及びタウリントランスポーター発現は低下した。4.5Gy照射によってもタウリン局在及びタウリントランスポーター発現は低下したが、タウリン1500mg/Kg投与により発現低下が抑制された。 タウリン1500mg/Kg投与は、4.5Gy照射によるタウリン局在及びタウリントランスポーター発現の低下を抑制した。タウリン3000mg/Kgではタウリン局在及びタウリントランスポーター発現の低下を抑制していないことから最適なタウリン濃度が存在する可能性が考えられる。タウリンは、タウリントランスポーターを介して細胞に取り込まれ臓器損傷に対して回復効果を有していることから、タウリントランスポーター発現の維持が放射線による細胞損傷を調節するカギとなることが示唆された。この研究結果は5/20日より開催されるINTAM21(中国)にて発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線による細胞損傷を調節する分子機構を明らかにするという観点より、まずマウスに照射線量とタウリン投与濃度を調節し、細胞外タウリン濃度による組織タウリントランスポーター発現変化への影響を検証する。次年度よりタウリントランスポーター活性/ 制御因子の量的変化がタウリントランスポーター発現の量的変化に与える影響を検証する、との計画を立てていた。 研究計画に対し、生存率に有意な変化は認められなかったが、4.5Gy照射マウスにおいて小腸組織中のタウリントランスポーター発現低下が、コントロール群に比較し、放射線暴露後のタウリン1500mg/kg投与で抑制された。細胞外タウリン濃度により組織タウリントランスポーター発現が変化するとの仮説通りの結果を得ることができた。 研究計画、実験、分析が順調に進んだため、5月20日に中国の瀋陽と大連で開催されるINTAM21への研究発表を行う予定でいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
細胞外タウリン濃度による組織タウリントランスポーター発現変化が確認された。そこで、本年度は放射線暴露後のタウリン投与がタウリントランスポーター発現の量的変化をもたらす機構の解明を行う予定である。そのため、1)放射線暴露後のタウリン投与によりタウリントランスポーター活性/ 制御因子であるTNF-αおよびNF-κBがタウリントランスポーター発現を調節するのかを病理組織学的に解析する。2)放射線暴露後のタウリン投与により核内の転写活性因子であるp53がタウリントランスポーター発現を調節するのかを病理組織学的に解析する。以上の2点を解析していく予定である。
|
Causes of Carryover |
平成29年度は、7Gy全身照射による評価が主であったが、抗酸化指標を測定するには線量が過剰である場合があった。また抗酸化指標として、MDA, SODなどの測定でまず変化を確認することが適切であると判断したため、抗酸化ルミノメータ購入は見送った。 本年度は、放射線暴露後のタウリン投与がタウリントランスポーター発現の量的変化をもたらす機構の解明を行う予定である。この解析において、腎機能についても確認することも視野に研究を進める計画もある。当初の研究計画よりも、放射線腎障害緩和への踏み込んだ状況になっており、解析に必要な機器、ソフト、ハード両面へ資金が必要になる。
|
Research Products
(10 results)