2017 Fiscal Year Research-status Report
血球転写因子を介した白血病幹細胞の生成維持に関わる代謝リプログラミング機構の解明
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17K16192
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高橋 寛行 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (20737712)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 白血病幹細胞 / 代謝リプログラミング / MLL白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
白血病幹細胞(LSC)機能は様々な転写因子・細胞内シグナル・エピゲノム因子などにより制御されているが、その詳細には未だ不明な点が多い。特にLSCの生成・維持には造血幹細胞が持つ代謝機構のリプログラミングが重要とされるが、その分子メカニズムは全く不明である。一方、PU.1, CEBPAといった血球転写因子はLSCの自己複製能に必須であることが知られているものの、その下流でLSC機能を制御する因子はほとんど解明されていない。そこで本研究では、予後不良の白血病としてMLL転座型白血病に注目し、代謝リプログラミングの観点から各種血球転写因子がLSC自己複製能を制御する仕組みを解明することを目指し、研究を行った。 平成29年度はMLL融合遺伝子による白血病をモデルとし、LSC分画が正常HSCと比べてどのように異なる代謝特性を持っているのか、LSCの生成過程でどのような代謝リプログラミングが起こっているのかを解明するため、まず網羅的遺伝子発現解析を施行した。最初に野生型とPU.1-floxマウスの骨髄細胞からc-Kit陽性細胞分画を分離し、レトロウイルスを用いてMLL-ENL融合遺伝子を導入した。さらに導入した細胞をメチルセルロース中で経代した後、液体培養に移し、細胞株を樹立した。これらの細胞にレトロウイルスを用いてCreを発現させ、48時間後に感染細胞をソーティング、RNAを抽出して網羅的遺伝子発現解析を施行した。現在、遺伝子発現データの解析を施行しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は予定通り、MLL白血病細胞の網羅的遺伝子発現解析を施行した。研究は概ね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は下記のとおり研究を進める予定である。 (1)MLL-ENL白血病由来LSCのメタボローム解析 平成29年度に樹立した細胞株を用いて、LSC分画をソーティング、解糖系とその周辺経路に焦点を当てた網羅的メタボローム解析を施行する。解析は慶應義塾大学医学部生化学教室の菱木貴子講師との共同研究で施行する。得られたデータから、正常HSC、GMPとLSCの代謝特性の違いを明らかにし、特に解糖系・酸化的リン酸化への依存度がMLL-ENL白血病でどのように変化しているかを詳細に解析する。 (2)PU.1欠失によるMLL-ENL細胞の代謝変化・遺伝子発現変化 Creを導入したMLL白血病細胞を用い、上記と同様の手法で網羅的メタボローム解析を施行、PU.1,欠失によるMLL-ENL細胞の代謝変化を網羅的に明らかにする。これと平成29年度に施行した網羅的遺伝子発現解析をあわせ、PU.1欠失によりどのような遺伝子発現・代謝経路が異常を来しているのかを詳細に明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成29年度は細胞株の樹立・遺伝子発現解析のみを施行し、網羅的メタボローム解析は施行しなかったため、予定より消耗品支出が低額となった。メタボローム解析については平成30年度の施行を予定しており、平成29年度残額は平成30年度に使用する予定である。
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