2018 Fiscal Year Research-status Report
ダウン症候群患者由来iPS細胞を用いた肺血管病変発症機序の解明
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17K16261
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉辺 英世 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30791595)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | iPS細胞 / ダウン症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダウン症候群患者由来iPS細胞として2ライン、健常人由来iPS細胞として1ライン、さらにコントロールとして、ダウン症候群由来iPSのうち1ラインを、Cre/loxP技術を用いて、ダイソミーへとコレクションした1ラインを用いて実験を行った。それぞれを、フィーダーフリー環境にアジャストさせるため、マトリゲルコーティングののちにmTeSR1培地にて飼育した。これにより、未分化な状態での維持継代培養が可能であった。 既報の方法に従って、血管内皮細胞と血管平滑筋細胞への分化誘導を行った。血管平滑筋細胞においては、95%以上の効率で分化誘導が可能であり、それは平滑筋細胞特異的マーカーである、SM-MHCの発現によって確認した。平滑筋細胞は継続して培養が可能であった。ダウン症候群平滑筋細胞では、細胞増殖能が高く、またミトコンドリア機能の指標である酸素消費速度は低下していた。また、それぞれの細胞について、網羅的な発現解析を行うため、RNA-seqを行った。それぞれの群において、いくつかの遺伝子群における発現変化が確認され、それらの細胞生物学的な意義についての検証を行っていく予定である。 血管内皮細胞については、そのままでは5-30%程度の分化誘導効率であるため、培養6-8日目において、anti-PECAM1抗体を用いたFACSによる単離を行った。内皮細胞は、1-2週間しか培養できず、その後は細胞形態が変化し、細胞の性質が変わっていることが予想されたため、複数回のFACSを行い、均質な細胞純度、細胞性質を得るようにすることが出来るためには、いくつかの培養ステップでの工夫が必要であることが明らかとなった。今後、血管内皮細胞においても、細胞生理学的な検証を行っていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
iPS細胞からの、血管内皮細胞と血管平滑筋細胞への分化誘導系については安定して確率している。また、コントロールとして、正常由来iPS細胞だけではなく、トリソミー21iPS細胞をダイソミーへとコレクションしたラインを用いることにより、ライン間での表現型の差によるバイアスを排除できるように実験系を組み立てることができている。また、それぞれの細胞ラインを効率よく、血管平滑筋細胞と血管内皮細胞に分化誘導するプログラムについても、おおむね安定して出来るように、実験系を安定させることができている。現在は得られた細胞の細胞生物学的な検証や、RNA-seqを用いた網羅的発現解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
それぞれの細胞ラインにおける、細胞生物学的な違いを明らかにすることで、ダウン症候群における肺血管の生物学的な違いや特徴について明らかにしていく。また、次世代シークエンサーを用いたRNA-seqにより、それぞれの細胞群における網羅的な遺伝子発現解析を行っている。パスウェイ解析やクラスタリング解析により、どのようなシグナル経路が病態形成において重要な役割を果たしているのかを検証するとともに、そのシグナル経路をcorrectすることで、細胞レベルでの病態改善に役立つのかを検証することで、新たな治療ターゲットの同定に役立てる。
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