2017 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病病態の歯周組織におけるS100A8の役割と作用機構の解明
Project/Area Number |
17K17352
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
廣島 佑香 徳島大学, 先端酵素学研究所(プロテオ), 特任助教 (60545143)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 終末糖化産物 / 歯周病 / S100A8 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病関連歯周炎では歯周組織における最終糖化産物(AGE)の蓄積により炎症や組織破壊が促進し、歯周炎の病態が重症化する場合がある。平成29年度は不死化したヒト歯肉上皮細胞OBA-9にAGEおよび歯周病原因子(P.gingivalis由来LPS: PgLPS)を添加し、DNAマイクロアレイ分析を用いて、糖尿病および糖尿病関連歯周炎の病態における歯肉上皮細胞での遺伝子発現の変化について網羅的に分析を行った。その結果、コントロールBSAと比較してAGEを添加した歯肉上皮細胞では、1.6倍以上発現が増加した遺伝子は5遺伝子で、そのうちS100A8は約2倍の変化を示した。また、血清アミロイドA (SAA2)など炎症関連因子の増加が認められた。一方、1.6倍以上減少したものは29遺伝子であった。AGEとPgLPSの共存下では、SAA2, S100A8, S100A9, IL-6, CCL2などの遺伝子において2倍以上の発現増加が認められた。一方、1.6倍以上減少したものは6遺伝子であった。多くの遺伝子において、AGEとPgLPSの共存下ではAGE単独よりも遺伝子の発現が増強していることが明らかとなった。また、発現に変化が認められた遺伝子については、その遺伝子発現をリアルタイムPCR法により調べた。 また、OBA-9細胞におけるS100A8およびS100A9の局在を免疫蛍光染色で調べた結果、S100A8はBSA添加時、核に局在しているが、AGEとPgLPSの共存下では核と細胞質にも局在することが観察された。一方、S100A9は細胞質に局在しており、AGEおよびPgLPSの添加による局在の変化は見られなかった。 AGEやPgLPSはヒト歯肉上皮細胞において、自然免疫や炎症に関連する遺伝子を誘導し、糖尿病関連歯周炎の病態や生体防御反応に影響を与える可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロアレイ分析により、歯肉上皮細胞においてS100A8がAGE添加により誘導されること、さらにPgLPSとの共存下で発現が増強することを明らかにした。また、歯肉上皮細胞におけるS100A8の局在とAGE添加時の動態について明らかにした。一年目の研究実施計画に沿った進行であるため、順調であると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、S100A8の存在に有無によって、糖尿病病態における歯肉上皮の酸化ストレス、アポトーシスおよび細胞分化などがどのように変化するか検討を行う。
|
Causes of Carryover |
残額調整がうまくいかなかった。次年度の物品費として使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)