2017 Fiscal Year Research-status Report
メディアと場面の相互連関に基づく英語定型表現の分析とインデックス化
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17K17943
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土屋 智行 九州大学, 言語文化研究院, 助教 (80759366)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 英語教育 / コミュニケーション / 定型表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、コミュニケーション形態と文脈に応じて使い分けられる定型表現を実際の会話データから収集し、その理論的な体系化と英語教育への応用を目指している。平成29年度は、これまでに収録した会話データを対象にパターン束分析をおこない、対面会話・電話会話・メールのやりとりのそれぞれのコミュニケーション形態に特徴的な表現パターンがあるかを分析した。分析の結果、コミュニケーション形態ごとに使い回される表現パターンには、具体的な語彙が出現している一方、すべての形態に共通する表現パターンには、前置詞や代名詞などの抽象的な語彙が中心的であった。この結果から、人が使用している定型表現の記憶は、コミュニケーション形態や文脈等と密接にかかわっており、人はコミュニケーションの文脈に最も適した定型表現を、過去の類似文脈の会話の記憶から手繰り寄せていると考察した。また、抽出された表現パターンの生起状況を確認し、それらがコミュニケーションの円滑化に関わっているかを検討した。この分析、考察、およびパターンの検討内容を、学会・研究会での発表および論文として発表した。 また、定型表現の記憶と利用に強く関連する認知的な現象として無意識的剽窃 (cryptomnesia) を挙げ、ただの発話の引用に過ぎなかった言語表現が次第に個人の発話の資源へと内在化されていく過程は、元表現の情報源に関する記憶の希薄化によるものであるという仮説を立てた。この仮説については、定型表現に関する研究会にて、国内外の研究者と意見交換をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回、協力者である英語話者の大学院生の募集とスケジュールの調整に時間を要した。また、専門領域がそれぞれ大きく異なる協力者が集まったため、協力者同士の共通する話題であり、かつ英語教育に応用可能な会話トピックを検討するために、会話データの収録開始が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、会話トピックを、従来とは異なる方法で設定したうえで、会話データの収録作業をおこなうこととする。また、同時並行的に、(a) これまでに収録したデータを、昨年度に確立したパターン束分析の手法を用いて分析し、(b) 抽出された表現パターンの検討をおこない、英語母語話者からの意見を募る。 同時に、これまでに得られた知見を発表するために、出版予定の論文集および書籍の執筆を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度中に会話データの収録および書き起こし作業を予定していたが、最初の募集では、収録協力者が十分に集まらなかったことで、人件費・謝金の使用額が当初予定したものよりも少なくなった。現在、収録作業を実施しており、未使用の交付金については、次年度中に使用する予定である。
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