2017 Fiscal Year Research-status Report
希望を育てる学校教育の検討―教師・子どもの評価行動に着目して
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17K18206
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
鳥越 ゆい子 帝京科学大学, 教育人間科学部, 講師 (60550267)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 希望 / 学級内の相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「いま、なぜ我が国の若者・子どもたちが希望を持てないのか」という問いに対し、教育社会学の立場から取り組み、子どもの希望を損なわずに育てる学校の教育方法について明らかにするよう試みることである。そのために、子どもの「希望(ホープ)」を育てることに成功しているEd Vision型プロジェクト・ベース学習を取り入れている中学校に行き、フィールドワーク調査をおこなう予定である。 そこで、初年度である平成29年度は、調査を成功させるための基盤固めとして有効な観察視点を得ることを目的に据え、主に以下のふたつに注力した。ひとつは、E.ゴッフマンの相互作用研究で提示される知見を整理し、学級内の評価行動を抽出するための理論的検討をおこなった。これに加えてふたつめに、既存データの再分析、および再分析で得た知見を活用しながら学級内で生じる評価行動の抽出をおこなった。 具体的には、内閣府調査の再分析、および申請者自身が過去に調査した共同的な学習を通して「学びから逃走」せずに向き合うようになっていくフィールドワークデータの再分析を試みた。 実績の一部として、フィールドワークデータの分析内容について簡単に紹介しておく。子ども同士の関心を高めよいところを見つけ合うような取り組み(教師が子どもを表立って評価しない、指名しない、子どもを頭ごなしに叱らないなど)を通して、子ども同士で学習面だけに限らない些細なものも含む多様なよいところの指摘が相互におこなわれ、子どもたちの学習態度が変化したことがうかがえた。こうした変化は、ゴッフマンが指摘するような自己呈示の方法の変更によりもたらされたものである。すなわち、教室内で子どもたちは自分自身が与える印象を操作しようと試みていた。しかし、担任教師やクラスメイトの子どもたちから褒められるという経験により、その自己呈示の方法が変更されたのだと指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度、教師―子ども間の評価方法、子ども間の評価方法の変化と、子どもたちの学習に向かう姿勢とのあいだに関連があることは見出された。 さらにデータを読み込むとともに、ていねいに理論を整理すべきであると自覚しているが、今後の分析の見通しを掴むことができたという意味で、おおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度おこなった、理論の整理、およびデータの再分析を継続するとともに、フィールドワーク調査を開始したい。また、調査にあたっては、フィールドワーク調査に加えて、質問紙調査の実施も考えている。そこでその内容の検討を始めたい。 また、現状までの分析内容について、学会での口頭発表および学会誌への投稿をおこない、その妥当性についてにも検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
物品費については、おおむね予定通りに使用することができた。 一方で、当初予定していた予備調査旅費や学会発表旅費については、日程が合わず実施することができなかった。 しかし、次年度はこれらの調査や学会へ必ず行く予定であり、加えてアメリカのプロジェクトベース学習の推進校に視察も予定しているため、次年度末には当初の計画通りの額の使用が見込まれる。
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