• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2018 Fiscal Year Research-status Report

美術館における声と公共性に関する史的研究

Research Project

Project/Area Number 17K18246
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

今村 信隆  北海道大学, 文学研究科, 特任准教授 (90793620)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2020-03-31
Keywords美術批評史 / 博物館史 / 声 / 博物館の公共性 / 鑑賞教育
Outline of Annual Research Achievements

昨年度は、ミュージアム(特に美術館)における声を議論するうえで出発点になると考えらえられる一七世紀フランスの絵画論について、資料の読解・精査を進めてきた。これを受けて今年度は、読解する資料の幅を一八世紀、一九世紀にも広げながら、それぞれの資料の位置づけを探るという作業を遂行した。その成果を、研究書(単著)として刊行するべく、現在、執筆にとりかかっているところである。
現時点では、準備中のこの研究書には、(1)アンドレ・フェリビアン、ロラン・フレアール・ド・シャンブレ等、一七世紀フランスの著述家たちの絵画論における「会話」の意義、(2)ロジェ・ド・ピールによる会話篇の分析、(3)王立絵画彫刻アカデミーでの会議の分析、(4)当時の「創作」論や「天才」論に見られる紳士的な会話の理想像、といった項目が含まれる予定である。また、さらに一七世紀以降の展開を探るための論点として、「崇高」概念の変遷を追っており、これが同書の結論部分を占めることになることを想定している。
なお、最後に挙げた「崇高」論については、一七世紀フランスでこの概念を取り上げたニコラ・ボワローの訳業から、ド・ピール、バーク、カント、リオタールにいたるまでの系譜をたどりつつ、作品の前での語らいと沈黙について考察を続けており、すでに、学会発表で一定の成果を公表している(今村信隆「崇高論と孤独の美学」、北海道芸術学会第31回例会、2018年10月28日)。加えて、ミュージアムにおける声という問題に包括的にアプローチするという観点から、日本の美術館教育、鑑賞教育に関する研究も行い、成果の一部を論文として発表した(今村信隆「大正期・昭和初期の「対話型鑑賞」―岸田劉生、小堺宇市、関衛の鑑賞教育論から―(1)」北海道大学文学研究科紀要157号、pp49-74)。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

昨年度は、自身が編者となって準備を進めてきた教科書『博物館の歴史・理論・実践3―挑戦する博物館』(藝術学舎、2018年3月刊)に予想以上のエフォートを費やし、研究がやや遅滞するという事態に陥った。しかし、今年度は概ね予想どおりのエフォートを本研究に割くことができており、その成果も次第にまとまりつつある状況である。
また、成果のごく一部ではあるが、学会発表と論文のかたちで研究の内容を公表できたことも大きいと考えている。ここで発表した「崇高」論や日本の鑑賞教育史という論点は、研究を構想した当初は予定していなかったものであるが、本研究全体の目的を達成するうえでは、極めて意義深いものであると言えるだろう。
これらを踏まえて今後、研究を総括し、研究書のかたちでまとめていく作業を進めたい。

Strategy for Future Research Activity

2018年度までの研究によって、本研究をまとめるための論点はほぼ出揃ったと考えている。これを受けて、研究の最終年度にあたる2019年度は、多岐にわたるそれらの論点を整理し、まとまったかたちで公表することを目標とする。特に次の2点については、研究書として成果を示したい。
(1)一七世紀から一八世紀初頭という、いわば近代的な美術館の前史ともいうべき時期のフランスにおいて、芸術作品についての語らいがどのように理解されていたのかを明らかにすること。
(2)特に「崇高」をめぐる議論を軸としつつ、声や会話を媒介としない鑑賞の理想が美学や美術批評のなかで大勢を占めるにいたる経緯について、思想史的に整理を試みること。

Causes of Carryover

2018年9月に所属研究機関が変更となり、北海道大学文学研究科に特任准教授として着任したが、この本務の都合上、調査研究のための出張を行うことが難しく、特に旅費を使用することができなかった。しかし、図書等は研究の進捗と必要に応じて順次購入することができており、それらを活用した研究活動も大幅に遅滞しているわけではない。次年度は、ここまでの研究成果をとりまとめるうえで必要となってくる図書資料、文献資料を中心に購入しつつ、さらに現代のミュージアムの状況についても可能な限り情報を取り入れながら、スムーズに研究を進めていきたい。

  • Research Products

    (2 results)

All 2019 2018

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 大正期・昭和初期の「対話型鑑賞」―岸田劉生・小堺宇市・関衛の鑑賞教育論から―(1)2019

    • Author(s)
      今村信隆
    • Journal Title

      北海道大学文学研究科紀要

      Volume: 157 Pages: 49-74

    • Open Access
  • [Presentation] 崇高論と孤独の美学―絵の前で語ること/語らないこと2018

    • Author(s)
      今村信隆
    • Organizer
      北海道芸術学会第31回例会(於北海道教育大学札幌駅前サテライト)

URL: 

Published: 2019-12-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi