2019 Fiscal Year Research-status Report
ポスト・リスクモデルの犯罪者処遇に関する比較歴史犯罪学的研究
Project/Area Number |
17K18261
|
Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
平井 秀幸 四天王寺大学, 人文社会学部, 准教授 (00611360)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 薬物 / リスク / 社会復帰 / 支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記載された通り、本研究は、近年の先端的研究において犯罪者処遇の新たなグローバル・パラダイムとして徐々に注目されつつあるポスト・リスクモデルの犯罪者処遇に関して、薬物事犯者処遇を具体的事例として犯罪学・矯正教育社会学の観点から経験的・理論的・政策科学的に考察することを目的とする。特に、国際比較フィールドワークと歴史分析を縦横に組み合わせることでポスト・リスクモデルの犯罪者処遇の全体像を経験的に明らかにする点、単に当該モデルの実態解明に留まらず、それが依拠する規範的な「社会復帰」や「支援」像が現代社会において持つ意味を理論的・批判的に問う点、認知行動療法、刑の一部執行猶予制度におけるダルクの処遇参加、ドラッグコートなど最新の政策・実践動向への積極的提言をめざす点などに、本研究の大きな特色がある。 本研究は、薬物事犯者処遇におけるリスク的処遇と非リスク的処遇の“共存”形態(ポスト・リスクモデル)に注目して、(A)日本と英語圏の“比較フィールドワーク”、(B)日本の薬物事犯者処遇に関する“歴史研究”、(C)ポスト・リスクモデルの犯罪者処遇とそれが依拠する「社会復帰」像や「立ち直り」の自己像に関する“理論的考察”、(D)学術論文・書籍等の公刊、重要文献の翻訳、国際シンポジウムの開催、の四つのプロジェクトにより構成される。 本年度は、 プロジェクトA・B:薬物事犯者を含む犯罪者処遇の歴史に関して、前年度までに収集したデータをふまえていくつかの論考を刊行した。 プロジェクトC・D:ポスト・リスクモデルに基づく犯罪者処遇に関する理論的考察を進め、いくつかの論考を刊行した。 プロジェクトD:昨年度収集した文献の翻訳および整序を実施したほか、学術論文の刊行を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、現在までの研究達成度に関しては、おおむね順調に進展していると考えられる。 本研究の研究期間を通しての研究課題は、(A)日本と英語圏の“比較フィールドワーク”、(B)日本の薬物事犯者処遇に関する“歴史研究”、(C)ポスト・リスクモデルの犯罪者処遇とそれが依拠する「社会復帰」像や「立ち直り」の自己像に関する“理論的考察”、(D)学術論文・書籍等の公刊、重要文献の翻訳、国際シンポジウムの開催、の四つのプロジェクトに大別される。 今年度は、Aに関してはフィールドエントリーが先方の事情で難航したため、急きょ研究計画を柔軟に変更し、日本国内での調査を優先して実施することになった。Bに関しては前年度までに収集したデータをもとに、いくつかの論考を刊行することができた。また、C・Dに関しては、平井秀幸,2019,「ナラティヴ犯罪学における近年の展開――規範的コミットメント・ナラティヴ的介入・ナラティヴ的闘争」『四天王寺大学紀要』68:175-198.や、平井秀幸,2019,「刑事司法における薬物事犯者処遇の歴史的変遷」『NPO法人リカバリー・札幌刑務支所合同研修会講演』をはじめとする業績が刊行され、研究計画の進展が見られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、交付申請書に記された研究計画に従い、(A)日本と英語圏の“比較フィールドワーク”、(B)日本の薬物事犯者処遇に関する“歴史研究”、(C)ポスト・リスクモデルの犯罪者処遇とそれが依拠する「社会復帰」像や「立ち直り」の自己像に関する“理論的考察”、(D)学術論文・書籍等の公刊、重要文献の翻訳、国際シンポジウムの開催、の四つのプロジェクトについて、精力的な研究を進める。 ただし、Aに関して、昨年度の研究実施状況報告書に記載した通り、また、上記「現在までの進捗状況」に記載した通り、より広範に刑事司法内外のポスト・リスクモデル的処遇を視野に収めつつ、調査対象や研究計画を再構築していくことになった。それに伴い、当初予定していた調査先から柔軟な変更を行い、日本国内において近年のポスト・リスクモデル状況を先取りしてプログラム化したと思われる刑事司法領域(例えば『女性依存症者回復支援センター』)における調査研究を実施していく。
|
Causes of Carryover |
フィールドワーク先を柔軟に変更した関係で、当初予定より「旅費」の支出が少なくなり、次年度使用額が生じた。次年度は「研究実施状況報告書」で述べた新たな調査先へのフィールドワークを実施するため、翌年度分として請求した助成金と合わせてそのための諸支出が行われる予定である。
|
Research Products
(3 results)