2017 Fiscal Year Research-status Report
「伝えあい保育」の理論と実践における人間観・社会観の関連に関する思想史的研究
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17K18273
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Research Institution | Kobe Shoin Women's University |
Principal Investigator |
吉田 直哉 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 講師 (70626647)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 伝えあい保育 / 集団保育 / 言葉の発達 / 社会性の発達 / 保育構造論 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である2017年度は、伝えあい保育の思想の発展過程を明らかにする最も初期の課題である、1960年代における保育思想の萌芽を対象として分析した。具体的には、①近藤薫樹の保育思想、②高橋さやかの保育思想、③斎藤公子の保育思想、保育実践について、3名の単行本を読解し、そこにおける保育思想の構造を摘出することを試みた。 近藤薫樹は、動物学専攻という異色のバックグラウンドを活かしながら、人間論と保育論を接合した人間-保育論ともいうべき保育の存在論を提示した。 高橋さやかは、古典的な児童文化財との対峙により、子どもは人間形成(倫理性の涵養を含む)を行うと考え、絵本・紙芝居を読む、そして読んだ絵本等についての子どもの創作活動を重視する、創作活動の成果について子ども同士、子どもと保育者の間でディスカッションを行うという三つの段階からなる独特の保育カリキュラム案を提示した。 斎藤公子は、障碍児保育からキャリアをスタートさせ、進化論的生物学、生理学、脳科学、小児医学など、主に自然科学に属する研究成果を摂取して、子どもの成長・発達と人類史をオーバーラップさせる特異な保育実践論を展開した。この斎藤の保育実践論は、自然科学各分野の第一人者との対話の結果として形成されたものである。 今年度取り入れた3名とも、子どもの集団の中における発達の重要性、および、集団の中における言葉を介したコミュニケーション力の涵養を重視している点が共通していることを明らかにしえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度扱った3名のうち、近藤薫樹に関しては、関西教育学会、関東教育学会における研究発表でその成果を発表し、それを踏まえて、関西教育学会年報、神戸松蔭女子学院大学研究紀要に、近藤薫樹の保育思想の概略を示す原著論文を投稿した。後者については既に刊行済みであり、全者については2018年8月に刊行される予定である。
重要な文献の収集・読解もおおむね順調に進捗していると考えられ、現在までの成果は来年度以降、続々と発表することを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度に検討した、高橋さやかの保育思想、及び斎藤公子の保育実践については、2018年度の乳幼児教育学会、関西教育学会のそれぞれにおいて研究発表を行うつもりである。
2018年度は、前年度の研究蓄積の上に立ち、さらに多角的な視座から伝えあい保育運動、理論発展史の全貌に迫っていく予定である。具体的には、名古屋保育問題研究会の宍戸健夫の保育構造論、大阪保育問題研究会の鈴木祥蔵の人権保育論を軸に、保育理論と実践の弁証法のあり方を描出していくことを目指す。
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Causes of Carryover |
必要とされる書籍の選定・発注が追い付かず、翌年度に発注することになった書籍が数冊生じた。
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Research Products
(6 results)