2019 Fiscal Year Research-status Report
「伝えあい保育」の理論と実践における人間観・社会観の関連に関する思想史的研究
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17K18273
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
吉田 直哉 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (70626647)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 安部富士男 / 高橋さやか / 天野章 / 加古里子(かこさとし) / ヴィゴツキー / マカレンコ / 生活指導論 / 集団主義保育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、前年度に引き続き、伝えあい保育の理論的展開の諸相を見るべく、中心的な理論家の言説を分析することを実施した。具体的には、安部富士男、高橋さやか、天野章、加古里子らである。前三者については、日本教育学会、日本乳幼児教育学会、関西教育学会島の関連学会で口頭発表として報告した上で、論文にまとめ投稿・掲載済みである。加古の保育思想に関しては未発表であるが、2020年度の学会発表を予定している。前年度の成果も含め、伝えあい保育の理論に共通する人間論的前提、社会論的前提を抽出することにある程度成功し得た。 安部に関して言えば、彼の富士男の保育構造論のうち、飼育・栽培活動の重視の背景にある労働観、人間観の特 質を明らかすることで、その教育的意義を明らかにした。安部が経営する安部幼稚園で は、広大な園庭において、動物の飼育・植物の栽培を子どもたちが実施することを保育内容の特色としている。安部は、幼稚園生活における飼育栽培を、「人格の発達」を促す、総合的な営みと捉える。飼育・栽培活動を通して、子どもは、人間と自然との関係を感性で捉え、豊かな感情体験に裏打ちされた思考を育むという。安部によれば、飼育・栽培活動においては、感情体験と同時に、子どもたち の思考が深まるという、二つの働きの絡み合いが実現する。飼育・栽培活動を通して、子どもたちは「感性・感情・意欲の系の発達」と、「認識・操作の系の発達」とが統一的に促されるというのである。このような思想の実践化は、伝えあい保育の理論的営為の一つの成果と言いうる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、十分に検討する予定では無かった重要な理論家を取り上げたため、3年目に取り上げる予定であった宍戸健夫、土方康夫、加藤繁美ら伝えあい保育の理論的総括、集大成を試みた保育学者の理論的検討を行うことが出来なかった。この点については、2020年度中にフォローが可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、伝えあい保育の理論的・思想的総括、集大成を試みた保育学者である宍戸健夫のカリキュラム論、およびその人間論的、社会論的前提を検討することによって、理論・思想としての伝えあい保育の到達点と射程を明らかにすることを試みる。宍戸の保育思想の概観については、2020年度の日本教育学会大会で研究発表を行うべく、目下鋭意準備中である。その内容を発展させた論考の投稿についても、2020年度中に行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス蔓延に伴い、参加予定であった学会大会が中止になるなどしたため、研究計画に一部変更が生じた。今年度開催の日本乳幼児教育学会、日本保育文化学会、日本保育者養成教育学会に、当初は2019年度に学会発表を行う予定であった内容を持ち越し・繰り下げし、研究成果を公表することを計画している。
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Research Products
(4 results)