2018 Fiscal Year Research-status Report
Neural mechanisms generating cerebellar learning signal in the inferior olivary nucleus
Project/Area Number |
17K18394
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
石川 享宏 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 主席研究員 (90595589)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小脳 / 学習信号 / 登上線維 / 下オリーブ核 / プルキンエ細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
小脳は運動学習に関して重要な脳領域であり、学習による入出力関係の調節は、プルキンエ細胞を中心とする小脳皮質神経細胞のシナプス可塑性によってもたらされる。このシナプス可塑性の引き金となる学習信号の実体は、下オリーブ核から小脳皮質に投射している登上線維を介した入力である。そこで、小脳の入出力調節を通じて適応的に運動を調節・制御する脳内メカニズムの理解を目的として、下オリーブ核に情報を伝達する神経回路と、それらの情報によって登上線維入力が生成される生理学的なメカニズムを解明することが本研究のねらいである。当該年度においては、マウスを利用して感覚入力が下オリーブ核に伝達される径路を明らかにするための神経トレーサーの注入実験と、登上線維入力に伴う小脳プルキンエ細胞の複雑スパイクのカルシウムイメージングをおこなった。 基本的に一つのプルキンエ細胞は単一の登上線維から入力を受けるが、視覚・聴覚・体性感覚刺激のいずれに対しても複雑スパイクを生じることがある。これらの感覚入力が下オリーブ核において統合されるのか、あるいは下オリーブ核に投射を送る赤核などにおいて統合されるのかを調べるため小細胞・大細胞赤核に神経トレーサーを注入した結果、逆行性にラベルされた神経細胞は大脳運動野に散見されるのみであり、他の皮質領域では確認されなかった。また、順行性の投射は下オリーブ核内の局所にのみ観察された。先行研究と合わせて解釈すると、ギャップ結合により電気的に結合した下オリーブ核細胞同士の相互作用によって複数の感覚情報の統合が生じると推定される。更には大脳運動野刺激と末梢神経刺激の両方に対して複雑スパイクを生じるプルキンエ細胞が確認されていることから、下オリーブ核内の相当広範囲の神経細胞が電気的に結合しており、そこでさまざまな情報の統合が生じていることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の実験計画においては、カルシウムイメージングによる登上線維入力の可視化においては二光子励起顕微鏡を利用し、顕微鏡下に頭部を固定した状態で計測をおこなう予定であった。しかしながら二光子励起顕微鏡では一度に計測可能な小脳皮質領域が比較的狭い範囲に限定されてしまい、複数のマイクロゾーン間での登上線維入力の比較が難しいことから、別のイメージング装置を利用することとした。新たな装置では二光子励起顕微鏡の4倍以上の範囲を観察することが可能であり、頭部を固定する必要性がないため歩行や探索行動時のイメージングや覚醒・睡眠時の比較も可能である。現在はこの装置を用いたイメージングによるカルシウムスパイクの検出を最適化するための実験と検証を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
小脳プルキンエ細胞特異的にGCaMPを発現するウイルスベクターを注入したマウスを用い、視覚・聴覚・体性感覚刺激による反応をカルシウムイメージングによって計測する。これにより、各種の刺激によって生じる登上線維入力が空間的にどのような広がりを持っているのか、また刺激を組み合わせることによって登上線維入力の生成確率が変動するのかどうかを調べる。またこれらの結果が、動物の覚醒状態や感覚刺激を与えた時の行動によって変化するのかどうかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
実験補助員の人件費として使用することを予定していたが、必要な技術を持った人材を雇用することができなかったため結果として次年度使用額が生じた。差額は人件費としては不十分であるため、今後の実験に使用するウイルスベクターやカルシウムイメージングに利用する消耗品等の購入費用および学会発表の旅費等に充てることとする。
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