2019 Fiscal Year Research-status Report
シーア派イスラームの聖廟・墓地の形成と発展:法理論と地理空間情報による総合的研究
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17K18456
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
守川 知子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00431297)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 墓 / シーア派 / 死生観 / イスラーム / 都市 / 地理空間情報 / 聖者廟 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、イランの古都であるイスファハーンの墓地および聖者廟を、フィールド調査および古地図のGIS分析の二つのアプローチによって重点的に検討した。 フィールド調査は、2019年5月に約1週間かけて行った。調査した墓地・および聖者廟は、イスファハーン最大の墓地であるタフテ・フーラード墓地、セルジューク朝期の宰相ニザーム・アルムルク(1092年没)の墓(かつてのダール・バティーフ墓地)、聖者廟イマームザーデ・イブラーヒーム、15世紀ごろに建造されたと伝えられる聖者廟イマームザーデ・ダルブ・イマーム、サファヴィー朝期の著名なシーア派法学者モハンマド・バーキル・マジュレスィー(1699年没)の墓(現代では聖者廟のように参詣に訪れる人で賑わう)などである。さらに、イスラーム教シーア派ではないものの、17世紀以降のイスファハーンに暮らす宗教マイノリティであるアルメニア人墓地についてもまた、墓地の管理人の方の案内を得て、非常に詳細に調査することができた。 また、ガージャール朝末の1923年にSultan Sayyid Riza Khanによって作成されたイスファハーンの非常に詳細な都市図をデジタル加工し、都市の中における聖者廟および墓地の位置を可視化する作業を行った。これにより、市壁から想定される12世紀や17世紀のイスファハーン市街域との比較を行うことが可能となり、本研究のテーマである都市の発展と聖者廟・墓地の空間構造の解明に向けて大きく前進することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、3年間である程度の成果があるものと見込んでいたが、対象とする地域の歴史的な地図(都市地図)の入手に時間がかかり、さらに歴史的な墓地の発展と、近代化され再開発が進む現代の都市との断絶を埋めることにやや時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の総括として、イスラーム社会の墓地研究者を集めた国際研究集会を開催する。ムスリム墓地を対象とする研究はヨーロッパのキリスト教徒墓地やユダヤ教徒墓地と比べても未だ少ないものの、個別の聖者廟などの研究は十分な蓄積がある。そのため、これらを結合させる国際研究集会を開催し、様々な事例を報告することで意見交換を行うことは、国際的に研究を進めていく上でも有用であると考える。
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Causes of Carryover |
本研究の総括として、「イスラーム社会の墓地・聖者廟・都市」と題する国際研究集会を開催し、国外の研究者らとの意見交換を行うとともに、研究成果を国際的に発表するため。
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