2017 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本の女性メディアにおける「パリジェンヌ幻想」の歴史的研究
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17K18477
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
猪俣 紀子 茨城大学, 人文社会科学部, 准教授 (20734487)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | パリジェンヌ / パリ / 幻想 / イメージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本におけるフランス文化の移入に関して、女性向けの大衆メディアを対象とし、日本人女性がイメージする「パリジェンヌ幻想」がいかに構築され、どのような変遷を経て現在に至ったのかを歴史的かつ社会学的に明らかにすることを目的としている。 とくに戦後日本の女性向けのメディアにおいては、パリジェンヌのライフスタイル、ファッション等に関する称賛と憧れの言説を頻繁に目にすることができる。日本女性が未だにパリジェンヌに憧れがあることは明らかであるが、そうした憧れはいかにして形成されたのだろうか。明治、大正期の男性作家が描く「パリジェンヌ(巴里女、巴里娘)」は明らかに娼婦であった。この男性のまなざしのもとにあったネガティブなパリジェンヌ像が、いかにして現在の女性メディアにおけるポジティブなパリジェンヌ表象へと受け渡されたのか。女性のパリ文化移入の歴史的研究がない現在、この「幻想」の歴史を辿ることは難しい。女性向け大衆メディアの研究を行い、今日に至るパリジェンヌ幻想がいかにして形成されたのかを明らかにしていく。 今年度は、日本人女性による「パリ幻想」形成に最も重要と思われる戦後から現代までの形成プロセスのなかでも、とくに2000年以降に刊行された書籍について調査したところ、刊行書籍のテーマが非常に細分化されていることがわかった。そして日本でのパリジェンヌ関連書籍の9割がパリジェンヌではなく日本人による著作であり、フランス人男性との結婚や、渡仏した有名人女性が「正統」な語り手として、日本のパリジェンヌ、パリ言説を作り出していることがわかった。また、パリジェンヌが日本を語る「正統性」を持ち,日本が再発見され,価値のあるものであることが確認されるという捻じれた関係ができていた。エイジングなど社会現象や流行によって、語られるパリジェンヌイメージが変化していることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大戦間期から戦後にかけての女性によるフランス文化移入と「パリジェンヌ」像を明かにするために、文献調査とフィールドワークを行うこと以下のように予定していた。 ① 日本国内諸機関(国会図書館、大宅壮一文庫、マンガミュージアムなど)における調査。女性が執筆したフランス文化論の書誌一覧の作成。女性向け雑誌、および雑誌記事の書誌一覧の作成。② フランスの諸機関(国立図書館、メディアセンターなど)におけるフィールドワーク。 ①の書誌については作成が進んでいるが、古い資料に関してはまだ時間を要する。 ②については資料閲覧を行った。体系的なリストを作成する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も書誌リストの作成を引き続き行い、文献に実際にあたる。雑誌について、今後重点的に資料閲覧を行う。フランスのメディアにおける「パリジェンヌ・イメージ」について歴史的な文献資料をあたる。今後の女性メディアでどのようにパリジェンヌイメージが語られていくのかも視野に入れ、女性に着目したこれまでにないフランスの文化移入の歴史的、社会学的研究を目指す。
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Research Products
(2 results)