2018 Fiscal Year Research-status Report
テクストの分節と階層化を考察基盤とする書記コミュニケーション史の構築
Project/Area Number |
17K18484
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 広光 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (70226546)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 日本語学 / 句読法 / 文体論 / 読書史 / 印刷史 / タイポグラフィ / 二十三年未来記 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の三つの課題について調査分析を行った。その結果および見通しについて記す。 (1)日本近代における句読法の確立については、その要素の一つとして欧文のパンクチュエーションの影響が指摘されてきたが、その具体的過程の実証に乏しかった。そこでRomaji Zasshi(明治18年6月―明治22年5月)を科研費で購入し、句読法が未だ確立していない時期のローマ字書きの日本語の文章における「,/.」の使用法を調査した。「, 」は複文、重文における使用がほとんどで論理関係を明示する欧文の使用法に準じているが、強調や間に関わる使用は見られず、修辞ではなく論理を視覚化することに重点が置かれていることが確認された。この方針が漢字仮名交じりの文における句読法の確立とどのように交渉するのかは今後の課題である。 (2)欧文の句読法史についてはヨーロッパにおける先行業績を確認した。その上で研究代表者も独自に同一本文のテクストがどのように句読法などによって分節化されていくかを解明する方法として、聖書に次いで良く読まれ、インキュナブラ以降刊本も多いImitaitone Christiの15世紀後半から17世紀半ばまでのラテン語、イタリア語、スペイン語刊本を調査し、年代、言語、書体、出版地、版型(享受形態に関与する)による違いを見ていくことにした。筆者架蔵の刊本6本については、句読記号使用の確認を厳密に行なうため、デジタル画像に収め、画像を拡大して調査する態勢を整えた。 (3)テクストの分節による意味統御とは対照的に、テクストが書物として物理的形態を纏う際に付与されるパラテクスト的諸要素は、テクスト外のコンテクストや文化的コードを呼び込む可能性が高まり、多用の読みの可能性が生成されることを明らかにする論文「複製技術時代の書物のアイデンティティ―末広鉄腸『二十三年未来記』の場合(中)―」を公刊した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)表記、文体、ジャンル、形態、制作年代など属性の異なる資料をサンプルとして選定し、サイズ・書体の異なる文字の配置の仕方、記載順序による階層性表示等の観点からレイアウトの類型を記述し、テクストの属性との対応関係を探るためのデータベースを作成した。これは実績(3)に記した公刊論文の考察と、実績(2)の欧文句読法成立史との比較として役に立てることができた。ただし、時間の関係上、サンプル数は絞らざるを得なかった。「おおむね順調」の理由である。 (2) 収集した資料のうち、特に明治の未来記諸本について、紙面・版面のレイアウトの記述を行った。分節指標およびテクスト属性との関連性を絶えず考慮に入れながら、テクストにおける指示内容統御機能と享受者による意味解釈の関係を考察する論文を執筆し公刊した。ただし、これは見込みとは異なり、意味統御よりも複数解釈可能性の方が前面に出た。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究のまとめと萌芽的研究としての今度の展望を明確にすることを研究の中心におく。 (1)研究課題のケーススタディとして位置づけられ、(上)(中)の二篇を公刊してきた論文「複製技術時代の書物のアイデンティティ―末広鉄腸『二十三年未来記』の場)―」を完結させる。 (2)本研究課題については、学際的新領域の方向性を示すための単行本執筆と刊行を考えており、最終年度は出来るだけ研究時間と研究費用をこのために割きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
二泊三日の東京出張で調査を行ない、複写物をデジタルデータで入手する予定であった資料が、Web上で画像公開されていることが判明し、現代段階での調査とデータ入手は必要ではなくなった。その金額が次年度使用額となった。
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Research Products
(1 results)