2017 Fiscal Year Research-status Report
アニメの「声」の文化とその制度化を言語学,現代思想,メディア論の協同で捉える試み
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17K18485
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
太田 一郎 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (60203783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都木 昭 名古屋大学, 人文学研究科, 准教授 (60548999)
太田 純貴 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (90757957)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 社会言語学 / アニメの声 / メディア論 / 声の文化 / 声優 / メディアタイゼーション / 現代思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアニメに代表されるメディアの「声」とその文化的制度化の問題を,(1)声優の「声の質(voice quality)」の音響分析や発話実験などによる音声学的実証,(2)その結果を元に「声の触感」をバルトやドゥルーズなどの現代思想の概念により検討,および(3)「声の質」の変化の社会言語学的解釈を通して,(4) 社会と文化の関係をつなぐメディア論的概念(メディアタイゼーション)により,「声」という体系性を超えた言語的実在をとらえて,(5)新たな分野融合的言語文化研究の可能性を探ることを目的とする。 今年度は次に挙げる研究を実施した。(1) 名古屋大学において,二度の研究打ち合わせを行い,声の質の分析対象とする音声的特徴を特定した。(2) 平成29年9月7日名古屋音声研究会(名古屋大学)において,本研究の概要について発表した。 (3)分析対象とするアニメ作品の権利者(DVD販売元,声優事務所等)より作品の利用許諾を得た。(4) 声の質の分析につながる研究として,分担者宇都木と研究協力者王が日本音響学会において,声の質と感情との関連についての研究成果を発表した。(5) 感覚論やメディア考古学と呼ばれる視点・発想を中心に文献を収集して、現代思想・メディア論的観点からアニメ声を分析するための資料基盤を整備した。並行して、国立国会図書館でアニメ雑誌の調査に従事した。(6) 平成30年3月6日,7日に聴覚文化論を専門とする秋吉康晴氏(京都精華大学)を招聘してワークショップを鹿児島大学で開催し、(アニメ)声に関する研究資料と論点のさらなる検討を行なった。(7) 大学紀要,雑誌『現代思想』等に関連する論考を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
音声分析の準備,資料の収集,一部の成果発表などは計画通りに行うことが出来たが,アニメ作品の権利者からの使用許諾を得るのに予想以上に時間がかかり,年度内に音声分析に着手することができなかった。この点以外はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度以降は次のような手順で研究を進める。 (1) まずアニメの「声の質」の音響的特性を明らかにする。(2) 声優志望の学生に対してアフレコタスク等の実験で音声資料を収集し,音響分析で明らかとなったアニメ声優の「声の質」の音響特性や聴取実験の結果と比較することでアニメの声として認識される音響的特性を特定する。(3) 一般の大学生にアニメの声の特性が認識できるかどうかの聴取実験を行う。(4) 協力者の声優志望の学生と一般学生に質問紙や聴き取り等でその社会的特性(属性,日常行動,パーソナリティ,メディア実践等)の情報収集を行い,音響分析の結果との関連性を探る。(5) アニメ文化の通史的検討などを進めるために,資料収集と国立国会図書館でのアニメ雑誌調査を継続的に行う。(6) 聴覚文化論の専門家やポピュラーカルチャーにおける声の問題を取り上げている研究者を招聘してワークショップを鹿児島大学で開催し,そこでの議論等の結果をもとに,言語学と現代思想・メディア論の接点を探りながら、アニメ声の分析を進める。(7) これらの研究により得られた知見は順次国内や海外での学会発表や論文等のかたちで公表する。
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Causes of Carryover |
アニメ作品の権利者からの使用許諾を得るのに時間を要したため,当初予定していた実験用物品,調査旅費や研究協力アルバイトの謝金などに未使用額が生じたため,それらは次年度使用額となった。30年度は使用許諾を得たことにより音声分析が実施できるため,研究協力の謝金,発話実験のための物品および調査旅費など,前年度使用予定であった予算を使用し,研究を推進する。
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Research Products
(4 results)