2017 Fiscal Year Research-status Report
Concept Analysis of Freedom Using Popular Songs as Text
Project/Area Number |
17K18548
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
河野 勝 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70306489)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷澤 正嗣 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (20267454)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | 政治理論 / 自由 / テキスト分析 / ポピュラー音楽 / 北米 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、北米で親しまれるポピュラー音楽の中で、自由がどのように表現されてきたかを分析することを通して、この概念が一般の人々の日常の生活の中でどのように受容され発展してきたかを実証的に跡付けることである。本研究の計画は、データセット構築、テクスト分析、ケーススタディという三つの柱によって構成されるが、初年度では当初からの計画通りに、データセット構築を重点的に行った。まず、音楽ランキングを発表している代表的な雑誌として、Billboard、NME(New Musical Express)、ローリング・ストーンの三つを選定し、それぞれのランキングの特徴を精査した上で、一貫性などの理由からBillboardを用いることを決定した。次に、そのランキングに基づいて、1960 年から2016 年までの各年について、年間チャートの上位20 曲を特定し、その一覧表を作成した。さらに、それらの楽曲の歌詞をダウンロードし、データクリーニングなどをほどこして、テクストデータ化がほぼ終わった。 この作業の傍ら、研究分担者および連携研究者の協力をえて、政治理論、社会史研究、北米地域研究、音楽学・音楽史論など、関連する分野の中で、ポピュラー音楽と自由概念との関連を論じた先行研究のサーベイを進めた。また、初年度の終わりまでには10程度の代表的楽曲を選び、それらの創作の経緯や背景を詳細に検証し、歌詞にあらわれる自由の概念に込められた政治的・社会的なメッセージを明らかにするためのケーススタディに着手することが計画されていたが、その選定も暫定的に終わり、北米でのインタヴューやアーカイブリサーチのための準備作業にも取り掛かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度中に、音楽誌の選定、ランキングの確定、さらに歌詞のデータ化を重点的に進めることを予定していたが、この作業は順調に達成された。研究分担者および連携研究者のアドバイスを受けて先行文献のレヴューも、計画通り進んでいる。研究分担者および連携研究者との意見交換の中で、北米のいくつかの都市ではストリートミュージシャンたちが演奏する際の届け出を組織的に行っている場合があることが示唆されたので、ニューヨークの地下鉄の駅およびバンクーバーの公共市場での音楽演奏の制度化について詳しく調べることとし、そうした組織にコンタクトをとり実際に演奏している者に対して体系だったインタビューを行うことを新たに計画に加えた。さらに、米国オクラホマ州タルサ大学にボブディランの資料を集めたアーカイブが近年設立されたことを知り、コンタクトをとり、本プロジェクトにとって参考となる資料が存在するかを確認した。当初の計画では、初年度の終わりまでに自由を歌ったいくつかの代表的な楽曲のケーススタテディのために北米の都市を少なくともひとつ訪れる予定であったが、初年度の終わり(2月)に研究代表者の身内が二ヶ月近く入院するという事態が発生し、予定していた(3月の)海外出張を取りやめざるを得なくなった。このため、この分に計上していた予算は来年度以降に繰越し、インタヴューおよびアーカイブ調査は2年度以降にまとめて行うこととした。
|
Strategy for Future Research Activity |
歌詞データセットが整備されたので、2年度以降はテクスト分析に取り組む。標準的なテクストマイニングの方法を用いて、データ化された歌詞を単語や文節で区切り、出現の頻度や共出現の相関、出現傾向などを解析する。この作業は、基本的には探索的とならざるを得ないが、当初の研究計画に沿って、暫定的仮説として差別化される文脈をあらかじめ特定し、概念表出のパターンが時代とともにどのような変遷をたどってきたかを跡付けできるよう工夫する。また、2年度目には、10程度の代表的楽曲を選び、創作の経緯や背景を詳細に検証し、歌詞にあらわれる自由の概念に込められた政治的・社会的なメッセージを明らかにするためのケーススタディを本格的に始動させることになる。このために、分担者との協力も得て、北米の都市において実際にストリートミュージシャンたちにインタヴューを行ったり資料収集のためのアーカイブリサーチを行っていく。
|
Causes of Carryover |
当初の計画では、初年度の終わりまでに、少なくともひとつの北米都市を訪れ、自由を歌った代表的な楽曲のためのケーススタディの一環として、北米の都市においてストリートミュージシャンたちにインタヴューをしたり、資料収集のためのアーカイブリサーチをする予定であったが、年度の終わりに研究代表者の身内が入院するという事態が発生し、予定されていた海外出張をキャンセルせざるを得なくなった。このため、この分の計画を繰越し、インタヴューおよびアーカイブリサーチは、研究分担者および協力者とも連携して、翌年度以降にまとめて行うこととした。
|