2018 Fiscal Year Research-status Report
確率論理学習に基づく統一的意思決定モデルの構築と経済実験データへの応用
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17K18569
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石川 竜一郎 早稲田大学, 国際学術院, 准教授 (80345454)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 事例ベース意思決定理論 / 動的認識論理 / 帰納的ゲーム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、消費者のサービス選択行動データを用いた実証分析とそれを基礎付ける理論の構築を行なった。 サービス財の消費においては、一般的に事前にその消費から得られる効用を主体がわからないため、行動選択においては過去の「類似の経験」を通じた選択をするという仮説を用いた。こうした行動仮説は事例ベース意思決定理論と呼ばれる理論があるがその実証分析はほとんど行われていない。当該年度において、美容室・美容師の行動データを用いて、事例ベース意思決定理論がどの程度の説明力を持つかを検証した。結果、一定の説明力があることを示すことができたが、主体の「類似の経験」の学習過程がどのように行われるかを明らかにはできなかった。 こうした学習過程を明示的に分析するために、動的認識論理を用いた学習と意思決定の理論を構築した。この理論において、主体が獲得する情報をから帰納的に学習を行う側面と学習結果を用いて演繹的意思決定を行う側面を分離して定式化されている。このため、上記の事例ベース意思決定理論で不明だった学習プロセスを基礎付けることができると考えている。一方で、帰納的推論を通じて主体の選好がどのように形成されるかの定式化はされていないため、今後の課題が明確になった。 こうした知見から、意思決定主体が過去の事例を用いてどのような意思決定を行ったかの実証分析と、その背景にある理論を結びつける行動モデルの構築が可能になると考えている。ここでは背景にある理論として「事例ベース意思決定理論」や「帰納的ゲーム理論」があげられる。また、その行動モデル構築においては、単にデータと整合的になるパラメータの推計にとどまらず、通時的学習を通じて、どのような経路で帰納的学習を行なったかの動的過程にも注目してする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、帰納的意思決定に関わるサービス行動選択の実証分析、および帰納的推論と演繹的推論を分離して考察可能な理論モデルの構築を行うことができた。今後は行動モデルを構築するためのデータ分析と理論分析を深めることで、当初の目的にある、認識の基盤となる「認識データ集合」を用いた行動モデル構築を具現化していく。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて(1)データ分析に基づく帰納的学習における学習過程の描写、特に「認識データ集合」に基づく帰納的推論の分析(2)動的認識論理を用いた効用形成理論の構築(3)帰納的推論と演繹的推論を伴う行動モデルの構築が残された課題となる。 (1)については、当該年度に構築した理論分析をデータの性質に応じた形式で再構築し、「類似の経験」の指標となる類似度関数と推計結果の変遷と理論予測を比較することで進めていく。特に通時的変化の伴う「認識データ集合」に分析の焦点を当てることで、各時点における静的状態から動的過程の考察が可能になると考えている。 (2)については、心理学や行動経済学で蓄積されている効用形成理論研究を参照し、それらを説明可能な形で理論に取り入れていく。 このように研究を進めることで(3)の行動モデルの構築も並行して進捗すると考えられる。これは、心理学や行動経済学においてすでに記述的分析が行われているためである。彼らの記述的分析を当該年度の理論成果に組み込むことで、行動モデルへの橋渡しとしていく所存である。
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Causes of Carryover |
消費者行動データを購入するための費用を算入していたが、購入することなく利用できるデータセットの提供があり、データ購入の必要がなくなったため。
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