2018 Fiscal Year Research-status Report
非触法ぺドファイル(小児性愛者)の社会学的研究:承認論の臨界を問い直す
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17K18588
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
湯川 やよい 東京女子大学, 現代教養学部, 講師 (20723365)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | ペドファイル / 語り / セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、非触法ぺドファイル(子どもを性的な対象とする小児性愛者のうち、性加害を実行したことがない人々)の実態を、当事者の語りから読み解く仮説生成型の研究である。
2年目にあたる2018年度は、特に(1)前年度の国内調査についての海外発表(中間報告)、(2)海外調査、(3)関連領域における調査法関連での文献調査とまとめ、(4)国内での継続調査を行った。まず、(1)については、国際社会学会(7月、トロント)において報告を行った。日本国内の非触法ぺドファイルの自己形成が、北米中心に発信される診断文化の文脈とセクシュアリティのポリティクスの交差のなかで独自の位置取りを占めることを報告し、当該テーマにおいて先駆的な実践が報告される西欧非英語圏で活動する関連研究者と議論できたことは、貴重な成果と言える。また、ナラティブ分析の方法という観点から英語圏言説の分析を行った論文を共著『自己語りの社会学』に収録した(8月に出版)。 (2)については、米国フィラデルフィアおよび米国シアトルにおいて、関連研究者とのディスカッションおよびフィールド調査を行った。現地の運動当事者との面会は実現しなかったものの、関係者への間接的な調査は行うことができた。 (3)については、周辺関連領域における性的マイノリティ一般の調査技法にかんする論稿をまとめ、発表した(和文、2019年3月)。また、(4)国内調査についても継続インフォーマントへの聞き取りを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度できなかった北米圏調査を実行し、英語圏での同領域の近年の議論をリードする研究者とのネットワーキングに成功した点、および日本国内の調査結果を国際会議でシェアすることができた点が最大の成果といえる。 国内での新規インフォーマントの獲得は昨年度に続き十分に確保できていない。ただし、これは挑戦的研究故に当初からある程度予想されていた困難ではあるため、来年度もひきつづき現在のインフォーマントへ調査を進めつつ、新規インフォーマントの獲得にも注力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の調査および国際会議において、非触法若年当事者への支援が進む西欧圏研究者とのネットワークが行えたため、新たな論点も見ててきた。そのため、当初予定していた北米当事者団体の調査と並行して西欧圏での支援者側の取り組みにも焦点をあてる必要があると考える。
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Causes of Carryover |
理由は以下3点にある。 1点目は、本年度は予定していた北米調査の一部は実施できた(フィラデルフィア、シアトル)、最大級の当事者団体のあるボルティモア調査は実現できなかった。そのかわりに上記シアトル調査中に西欧非英語圏で上記を代替する調査の可能性がみえていた。その調整には一定の時間がかかるため、次年度の実施を予定している(次年度は、そのために旅費、通訳者の謝金を計上する必要がある)。 2点目は、機器の不具合である。出張中にモバイル機器の不具合が生じ、当面修理使用中であるが、次年度に交換買い替えが生じる可能性がある。 3点目は、国内調査の不確定状況にある。挑戦的研究故にインフォーマントの確保には常に不確実性が伴う。今年度は継続インフォーマントが中心であり新規インフォーマントにはメールでのアクセスは実現したものの対面面接に至っていない。時間をかけたラポール形成の上に次年度に対面面接をおこなうための費用が必要である(主に国内旅費、および非日本語母語話者当事者との通訳費用)。
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Research Products
(3 results)