2017 Fiscal Year Research-status Report
グローバル社会福祉体制における新国際再生産分業の社会学的分析
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17K18593
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Research Institution | Keisen University |
Principal Investigator |
定松 文 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (40282892)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 家事・介護労働者 / 再生産領域の国際分業 / 女性移民 / ジェンダー / 国際社会学 / 世帯保持 / 福祉体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生産分野における移住労働者への依存による社会福祉体制維持を、グローバル社会福祉体制における新国際再生産分業とみなして、移住家事・介護労働者の受入れ国と出身国における世帯維持への寄与について検討することが研究の目的である。 平成29年度は、先行研究と統計資料から、再生産領域における移住女性家事・介護労働者について、受入れ国の家事・介護労働の滞在資格での就労と滞在、身分による資格での滞在で家事・介護労働の就労および正規・非正規滞在で大きく4つに分類し、主要な受入れ国の傾向と家事・介護労働者の権利等の差異を概観し、日本における外国人家事労働者の受入れの歴史と現在の国家戦略特区での外国人家事支援人材の就労条件、給与、問題点を分析した(「家事労働とジェンダー」『産業現場における外国人労働者』明石書店,2018年6月発行予定)。 予備調査として、母親がフィリピン国籍の女性、以前家事労働で就労した経験のあるフィリピン国籍の女性に、就労までの経緯、就労内容、休暇、給与、契約、出身国への送金などうかがった。計画書でも述べているように、信頼関係の構築、相手の時間の都合などにより聴き取り調査が難しいことも確認された。またベトナム人にまで拡大することは現時点では比較可能な職種ではないため、フィリピン人に絞ることとした。具体的には機縁方式で先に調査票による調査を行い、そこから聴き取り調査に応じてくれるインフォーマントへの聴き取り調査に変更し、平成30年5月から開始予定としている。 2月から3月にかけての現地調査については、1月下旬に台湾世新大学のジェンダー研究者が来日した際に知識提供をしていただき、アジアの家事労働者の移動とフィリピン人とベトナム人の家事・介護労働者を多く受け入れている台湾での就労状況の資料をいただくことで代替し、代わりに平成30年度の夏にフィリピンでの現地調査を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2-3月にかけて行う予定の調査を1月に知識提要を依頼していた研究者の来日、また先行研究の分析など、移住家事・介護労働者受入れ枠組みの比較分析等に研究の重点を置いたため変更し、次年度の8-9月にフィリピンで行うことにした。これによる研究そのものへの影響はあまりない。むしろ聴き取り調査を進める中で、出身国側から聴き取りをしたほうが明確に答えてもらえることもあるので、順当な時期であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年5月より、機縁方式で家事・介護労働に以前就いていた、あるいは現在就いている移住女性に調査票を日本と英語、必要であればタガログ語で配布し、6月に集計を行う。この中間報告として、平成30年7月19日にカナダ・トロントで行われる国際社会学会(ISA)で発表を行う。 9月以降に調査票を返送していただいた中から、聴き取り調査に応じていただだける方に聴き取り調査を行い、同時に彼女たちを雇用する家事代行業者への聴き取りも補足的に行う。相手の最も話しやすい言語で調査を行うためその際にはタガログ語の通訳が必要になる場合も想定しつつ個人情報の保護の観点から記述データについては研究室に保管し、音声データについてはインターネットに接続しない状態のハードディスクに保存する。なお、この調査は最終年度の9月まで継続する予定である。
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Causes of Carryover |
旅費について、2-3月に予定していた台湾での現地調査が、研究休暇による研究者の来日によって日本で行えたため、減額になった。 その他費について、研究計画では予定していなかった、中間報告を平成30年7月19日にカナダ・トロントにおいて行うこととなったため、参加費をその他費として計上した。
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