2018 Fiscal Year Research-status Report
視線研究に基づくASD児者の予測性を高める授業及び教材デザインの検討
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17K18605
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
齊藤 真善 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50344544)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安達 潤 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (70344538)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | ASD / 学習場面 / 眼球運動 / ICT |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、二つ目の研究課題である「対人的学習場面とコンピューター(ICT)による学習場面の相違点についての検討」を行った。まずe-learning教材を実験刺激として使用可能かどうか検討を行ったが、独立変数(視覚情報の構造化の程度、視覚情報と聴覚情報の統合の有無など)を明確に設定することが困難であったため、パワーポイントを使って架空の教材を作成し、その教材視聴中の視線パタンを検討することから実験を開始した。 課題は、画像を見ながら、音声で説明されている画像内のターゲットを注視するというものであった。条件は、画像と説明文を同一スライド内に併置した条件(以下、併置条件)と画像のみを提示する条件(以下、併置なし条件)の二つであった。独立変数を設定することが実験の目的であるため、定型発達者6名を対象に予備的に検討を行った(AQ低群5名、AQ高値者1名:38点)。眼球運動データから、①音声内容と停留位置の一致・不一致の割合、②一致・不一致間の推移確率から算出した平均情報量(エントロピー)について分析した。 ①の結果は、併置条件においてAQ高値者はAQ低群に比べて、不一致の割合が高かったが、併置なし条件では一致の割合が増加し、AQ低群と類似した傾向となった。②の結果は、併置条件においてAQ高値者はAQ低群に比べて、「不一致⇔不一致」間の推移確率が高かった。逆にAQ低群はAQ高値者に比べ「一致⇔一致」間と「一致⇔不一致」間の推移確率が高かった。平均情報量については大きな差がなかったが、推移確率のパタンには違いがあったので、この結果が平均情報量に反映されるように分析方法を再検討する必要があった。①と②の結果を総合すると、AQ高値者は、画像に対し説明文が併置される条件で影響を受けており、情報リソースの増加によって、音声内容と目標探索の効率が低下することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の検討の結果、独立変数として「教材の視覚的構造化」や「視聴覚情報の提示の方法」がASDの視線パタンの効率化に影響を与えていることが示唆されたことは意義があった。しかしながら反省点としては、①研究協力者の数が少なく一般化できる水準に到達していないこと、②刺激映像の選定基準が曖昧であったこと、③説明文の難易度と研究協力者の知識・語彙力のマッチングが曖昧だったこと、などが挙げられる。今後、これらの点について改善のために努力していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に大きな変更はない。次年度は最終年度であるため、三つ目の研究課題である「授業・教材デザインの構造化と視線の動きの効率化の関係についての検討」を開始する予定である。過去二年間の調査・実験の結果から明らかになった諸要因をもとに、札幌市内の特別支援学級をフィールドとして、実際の授業場面に介入し、実証的研究を進めていく予定である。 また、二つ目の研究課題「対人的学習場面とコンピューター(ICT)による学習場面の相違点についての検討」については、実験刺激の修正を加えたあと、成人ASD者と定型発達者を対象に、十分なサンプル数を確保し進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
TobiiProGlasses2の購入金額が当初見積もり金額より少なかったため余剰金が発生した(2017年度)。また、2018年度に実施した実験は予備的検討段階だったため、学会発表のための旅費、研究協力者ならびにデータ分析者への謝金の支出が発生しなかった。 2019年度は、当初の計画通りに実験を実施する予定のため、研究協力者ならびにデータ分析にかかる謝金、学会発表のための旅費の支出を予定している。また、データの分析には多くの時間がかかることが判明したため、分析用のソフトウェアならびに分析用のパソコンを複数台購入し、スムーズな分析体制を構築することを予定している。
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