2017 Fiscal Year Research-status Report
An empirical study of resource allocation and research perfomance of faculty
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17K18642
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
藤村 正司 広島大学, 高等教育研究開発センター, 教授 (40181391)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 基盤研究費 / 競争的外部資金 / 研究生産性 / 仕事時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)理論研究では、資源配分の変化と教育研究活動の関連を評価する分析枠組みを構築するために、公共政策論、大学教授職の社会学、高等教育組織社会学、社会学及び経済学的新制度主義、そして高等教育財務・経営論を検討した。 (2)インタビュー調査では、8月~9月にかけて国立総合大学と教員養成単科大学の理事及び研究科長を訪問し、学内予算の流れを把握するとともに、法人化後の学科配分額、学部共通経費、間接経費の使途、光熱水費の推移など資料収集を行った。具体的には、産学連携、URAの配置状況や外部資金獲得の学内での取り組みや組織編成に関するヒアリングを行った。取材の成果は、学部長調査に反映させた。 (3)教員調査の実施に当たっては,研究生産性に焦点化するために、インプットとして仕事時間の配分、個人研究配分額、科研費など外部資金獲得額を伺った。アウトカム指標として、過去3年間の学術論文数の量と質を伺った。研究費については、回顧形式の設問により、現状と10年前の比較を行った。専任教員6,000人のサンプリングを行い、2,105人の回答を得た(回収率36.1%)。 (4)主な知見は、個人研究費の配分状況を設置者別にみると、国立大学では30万円が最も多く、全体の3割の教員が10年前と比して「5割以上減少した」、5割が「1~4割減少」したとし、そのことが研究活動に「重要な影響を及ぼしている」と回答するものが6割近くに及ぶ(公立:43%、私立大学:42%)。加えて、研究生産性の規定要因分析では、教育時間がマイナス、研究時間と個人研究費と外部資金がプラスの有意な影響があるが、外部資金の2乗項がマイナスだから過剰に外部資金を得ている教員の存在が明らかになった。さらに、設置者にかかわらず、教員は現状よりも研究時間を増やし、教育と管理運営の時間を減じたいことも明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、申請書の計画にしたがって、理論研究、取材、教員調査を実施し、併せて学部長調査の設計を行った。とくに、教員調査については回収率は3割を超える程度であったが、サンプル数は2,000人を超え、わが国の研究生産性が減少したのかを計量的に検証する上で十分であるが、次年度は再度調査しサンプル数を増やす予定である。また、実証分析では回答者の3割程度が自由記述欄にコメントを寄せ、個人研究費の増額や科研費の配分のあり方、研究時間の確保、とくに女性教員の仕事と家庭の両立の課題が記載されている。量的データに対し、自由記述から得られた質的情報で解釈を豊かにすることが可能になった。自己点検の課題として指摘すれば、設置者別にかかわらず、同一の調査票を配付したことである。とくに経営問題を抱えた私立大学では、教員の研究費それ自体の確保が危機的であることなどが指摘されている。設置者別の対応は、学部長調査に反映したい。理論的には、社会学的新制度主義による高等組織存立のメカニズムとして、loose/(de)-couplingや大学ランキングを受け入れる通訳可能性(commnesuration)の適用可能性を明らかにしつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究実施計画は、下記の通りである。 (1)理論研究では、引き続き資源配分と教育研究活動の関連を評価する分析枠組みを構築するために、公共政策論、大学教授職の社会学、組織社会学、社会学的・経済学的新制度主義、そして高等教育財務・経営論を検討する。(2)4月から8月に再度教員調査を実施し、回収数を増やす予定ある。(3)インタビュー調査では、8月~9月にかけて公立3大学の研究科長を訪問し、学内予算の流れを把握するとともに、法人化後の学科配分額、学部共通経費、光熱水費の推移など資料収集を行う。具体的には、産学連携、URAの配置状況や外部資金獲得の学内での取り組みや組織編成に関するヒアリングを行う。(4)国公私立大学2,200人の研究科長に対する悉皆調査にあたる。調査票には、学長裁量経費、研究科長裁量経費の使途、基盤研究費と競争的資金、「間接経費」の使途、及び両者の関連、全学的な競争的外部資金獲得ための工夫、組織風土、現状の研究費配分の課題・改善点などを伺う。調査票の発送は、12月までに各学部研究科長宛てに送付する。回収率を上げるためにリマインダーを送付するとともに、年度内には回収したアンケートについてデータ・クリーニングを行った後、単純集計とクロス表の作成を行う。 (5)9月に国立大学86法人の財務諸表(補助金明細書)の時系列データベースの作成に当たる。調査項目は、歳入・歳出、教育研究費、外部資金(科研費総額、委託研究費、寄付金)などである。(6)学会報告については、教員調査の結果を日本高等教育学会等で報告し、年度内に『第1次報告書』を刊行する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当初配分で予定していた教員調査票の郵送費がメール便で安価で実施できたこと、データのエクセル入力に当たって業者委託せず、学生アルバイトを導入したことで「人件費・謝金」が当初配分よりも安価な価格で可能になったこと、及び旅費として計上していた札幌医科大学への取材を見合わせたためである。翌年度分として請求した助成金については、学部長調査に加えて第2回教員調査を実施し、個別大学への訪問調査対象を増やし、当初計画の「国立大学財務諸表」(平成16から平成29年度)で得られる補助金明細書の他、情報を豊かにするため新たに「大学四季報」(東洋経済)により、財務データと科研費を組み合わせたデータベースを構築し、資源配分と成果の関係の特長を大学類型別に可視化する予定である。
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