2018 Fiscal Year Research-status Report
研究活動における科学者の不正行為を抑制するための新たな倫理教育プログラムの開発
Project/Area Number |
17K18658
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
河合 孝尚 長崎大学, 研究開発推進機構, 准教授 (40570792)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
Keywords | 研究倫理教育 / 不正リスク / well-being |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は科学者の不正リスク(動機・機会・正当化)要因の発生メカニズムを解明し、不正行為に対する抑止力を向上させることで不正行為を未然に防止することが出来るのではないかと着想し、そのための新たな倫理教育プログラムの開発を行うことを目的としている。 平成30年度では、科学者への調査票による研究不正行為に関する意識調査を行い、調査結果を分析し実効的な倫理教育プログラムの開発を行った。 はじめに研究者(PI等)を対象とした研究不正行為に関する意識調査のための調査票について検討・作成を行った。調査票についてはORIが実施したアンケート票や、その他関連するアンケート票等を参考にして検討を行った。調査方法についてはwebアンケート方式で研究不正行為に関する意識調査を行った。アンケートは完全匿名で行い、入力データについても入力後消去するよう考慮した。集計した結果258件の回答結果を集めた。 次に、集めた調査結果をもとに実効的な倫理教育プログラムの検討・開発を行った。プログラム開発については、well-being(福利)の概念に関わる非学業的ライフスキルを定義し、well-beingへの意識付けを行う為のカリキュラムの倫理教育への適用可能性について検討した。研究倫理教育においては、研究者の自己認識としてのwell-beingへの意識が、研究データ等の信頼性の向上に繋がる行動として具体的に展開される必要があることから、設定されるべき非学業的ライフスキルや、その効果を評価する尺度を検討し、well-beingの概念を組み入れた倫理教育プログラムの素案を作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Alejandro Adlerらによる研究において、well-being(福利)の実現に関わる非学業的ライフスキルを定義し、これを中等教育の学業科目の授業に組み込んで教える事で、青年期のwell-beingの認識と学業成績が有意に向上したという報告がなされている。これを基盤として本研究ではwell-beingの概念を組み入れた倫理教育プログラムを開発するために、先行研究の非学業的ライフスキルやトレーニングマニュアル等のデータの収集を行おうと計画したが、平成30年度は実験フィールドの政治的な理由等からデータ等の収集が困難であった。 次年度は改めてデータの収集等を行い、well-beingの実現に関わるライフスキルを含んだ倫理教育プログラムについて検討したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度では、well-being(福利)の概念を組み入れた倫理教育プログラムの開発と教育実践を行う。先行研究でのwell-beingへの意識付けを行う為のカリキュラムの構造と実施状況等を調査分析し、研究倫理教育に関わるカリキュラムへの適用可能性について検討し、我が国におけるwell-beingの概念を組み入れた倫理教育プログラムを開発する。そして研究公正と公共福祉を前提とするwell-beingの評価尺度の開発を行い、教育実践研究を行う。 well-beingの評価尺度の開発については、Adlerらの先行研究ではEPOCH尺度(Engagement (没頭), Perseverance(粘り強さ), Optimism(楽観主義), Connectedness(つながり), Happiness(幸福))に基づいて評価することで、well-beingに関する意識付けの度合いと学業科目の学習効果が共に有意に向上しているとの報告がある。本研究では、このEPOCH尺度を基盤とした研究公正と公共福祉を前提とするwell-beingの評価尺度を開発し、well-beingに関する意識付けの度合いと倫理教育の学習効果が有意に向上したのかについて測定する。 教育実践を行うフィールドとしては、研究協力者が所属する筑波大学や徳島大学、琉球大学等と協力し実施することで効率的に教育実践研究を進めていく。又、長崎大学においても研究代表者は研究倫理に関する講義を行っており、ここでも教育実践研究を行っていく。そして得られた研究成果等について国内外の学会等に積極的に報告していく。
|
Causes of Carryover |
先行研究ではwell-being(福利)の実現に関わる非学業的ライフスキルを定義し、これを中等教育の学業科目の授業に組み込んで教える事で、青年期のwell-beingの認識と学業成績が有意に向上したという報告がなされている。本研究で行うwell-beingの概念を組み入れた倫理教育プログラムを開発するために、この先行研究で定義された非学業的ライフスキルやトレーニングマニュアル等に関するデータ収集を行おうと計画したが、先行研究の実験フィールドであったブータンやメキシコ等の政治的な理由等からデータ等の収集が困難となり未使用額が生じた。 次年度は改めて先行研究データの収集等を行うこととし、その為の渡航費やwell-beingの概念を組み入れた倫理教育プログラムの教材開発費等に未使用額を使用する。
|
Research Products
(7 results)