2019 Fiscal Year Research-status Report
研究活動における科学者の不正行為を抑制するための新たな倫理教育プログラムの開発
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17K18658
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
河合 孝尚 長崎大学, 研究開発推進機構, 准教授 (40570792)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | 倫理教育 / 不正リスク / well-being |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は科学者の研究不正要因に関連する動機、機会、正当化の3要因の発生メカニズムを解明し、不正行為に対する抑止力を向上させることで不正行為を未然に防止することが出来るのではないかと着想し、そのための新たな倫理教育プログラムの開発を行うことを目的としている。 令和元年度では、前年度行った研究者へのアンケートによる研究不正行為に関する意識調査の分析結果をもとに、well-beingの概念を組み入れた倫理教育プログラムの開発を行った。研究不正行為に関する意識調査の分析結果では、研究者が研究不正を起こす理由と心理的要因と関連のある項目の探索の解析結果として、Henry A. Murrayの心理発生的欲求リストの野心(大望、意志権力、成就欲、および威光に関係する要求)、物的対象(おもに生きていない対象と結びついた要求)、権力(他人または自己に障害を与えることに関係する要求)という3つの心理的要因が研究不正を起こしやすい要因であることが明らかになった。これらをwell-beingの概念に関わる非学業的ライフスキルとして定義し、倫理教育に使用する教材等の中に組み入れた。また、研究公正と公共福祉を前提とするwell-beingの評価尺度については、Alejandro Adlerらの先行研究で使用されているEPOCH尺度(Engagement(没頭)、Perseverance(粘り強さ)、Optimism(楽観主義)、Connectedness(つながり)、Happiness(幸福))に基づいて評価するための質問項目を考案した。事後にヒアリング評価を行うことで、well-beingに関する意識付けの度合いによって研究倫理観の向上に繋がる行動として具体的に展開されているのか等の倫理教育プログラムについての学習効果によって有意に向上したのか等について分析評価を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
教育実践を行うフィールドとして、研究協力者が所属する筑波大学や徳島大学、琉球大学等と協力し、本研究で開発した倫理教育プログラムの教育実践による評価実験を令和2年初めに行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響で中止となり開催が延期となった。また、本研究ではwell-beingの概念を組み入れた倫理教育プログラムを開発するために、先行研究のトレーニングマニュアルや評価尺度等の関連データの収集を行おうと計画したが、先行研究で教育実践された実験フィールド(ブータン、メキシコ等)での新型コロナウイルスの影響等によりデータ等の収集が困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度では、新型コロナウイルスの影響で行えなかった本研究で開発した倫理教育プログラムの教育実践による評価実験を行う。 はじめに先行研究でのwell-beingへの意識付けを行う為のカリキュラムの構造と実施状況等を分析し、well-beingの概念を組み入れた倫理教育プログラムに関する研究公正と公共福祉を前提とする評価尺度を使って教育実践研究を行う。well-beingの評価尺度の開発については、Alejandro Adlerらの先行研究で使用されているEPOCH尺度に基づいて評価し、well-beingに関する意識付けの度合いと倫理教育科目の学習効果について分析する。そしてwell-beingに関する意識付けの度合いと研究倫理的判断の関係性について分析評価する。 教育実践を行うフィールドとしては、研究協力者が所属する筑波大学や徳島大学、琉球大学等と協力し実施することで効率的に教育実践研究を進めていく。又、長崎大学においても研究代表者は研究倫理に関する講義を行っており、ここでも教育実践研究を行う。そして得られた研究成果等について国内外の学会等に積極的に報告していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により先行研究で行われたブータン等の実験フィールドへの渡航の見通しが立たないため未使用額が生じた。また令和2年初めに行う予定であった大学生を対象とした新たな倫理教育方法の教育実践による評価実験についても行うことが困難となり、同じく渡航費等の未使用額が生じた。 次年度は、倫理教育方法等についてのブータンの教育省との意見交換は取り止め、文献調査等により先行研究のデータ収集を行う。そのための資料収集費として未使用額を使用する。また教育実践による評価実験を行うこととし、その為の渡航費等に未使用額を使用する。
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Research Products
(2 results)