2017 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the mathematical structure of bidomain models
| Project/Area Number |
17K18732
|
|---|
| Research Institution | Meiji University |
|---|
Principal Investigator |
俣野 博 明治大学, 研究・知財戦略機構, 特任教授 (40126165)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奈良 光紀 岩手大学, 理工学部, 准教授 (90512161)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
| Keywords | バイドメインモデル / 進行波 / 安定性 / 擬微分方程式 / 非線形問題 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
バイドメインモデルは，心臓電気生理学において重要な役割を演じる数理モデルであるが，主として数値シミュレーションに使われているだけで，この方程式の理論的研究，とくに解の安定性などに関する定性的研究は，ほとんど行われてこなかった．本研究は，代表者と森洋一朗氏が以前から進めてきた研究を引き継いで，さらに発展させることをめざすものである．前回の研究では，平面R^2の上でバイドメインAllen-Cahn方程式を考え，平面波の安定性をさまざまな角度から研究して，バイドメインモデルの定性的理論に関する世界でも初めての成果を得ることができた（CPAM, 2016）．ただ，そこで調べたのは線形安定性，すなわち線形化作用素のスペクトル情報に基づく安定性であった．２９年度の本研究では，平面内の無限帯状領域の上でバイドメインAllen-Cahn方程式を考え，進行波の非線形安定性をさまざまな角度から調べた．具体的には次のことを示した．
(1) 【非線形安定性解析】 線形安定であれば非線形の意味でも安定である．
(2) 【分岐問題の考察】 平面波解が安定から不安定に変わるとき，Hopf分岐が起こる．
論文は完成に近づいており，近いうちに投稿できる見込みである．
さらにこの研究と平行して，数値シミュレーションを数多く行った．具体的には，コンパクトな台をもつ初期値から出発した解の波面の漸近形状が，バイドメイン方程式の異方性が定めるWulff図形に近づくことを以前から我々は予想していたが，この予想が正しいかどうかを数値シミュレーションで確かめた．また，平面波が不安定な場合は，波面の部分にギザギザの突起が生じ，次第にそのギザギザが成長することが以前から一部の研究者の間で知られていた．そのギザギザの向きを数値計算して，Wulff図形との関係を調べた．
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
２９年度はまだ研究を開始したばかりであり，また，バイドメインモデルの解析の難しさから，非線形安定性に関する研究を年度内に完成させることはできなかったが，論文はほぼできあがっており，早い段階での投稿が見込まれる状況である．しかも，当初予定していなかった分岐問題の研究も予想以上に進んだので，その成果を同じ論文に含めることにした．このため，完成がやや遅くなっている．なお，この研究と平行して，バイドメインAllen-Cahn方程式の広がり波面に関する数値シミュレーションを数多く行い，幾つかの興味深い観察結果が得られた．ここで得られた知見は，目下整理中である．
ただ，当初の予定では，バイドメインFitzHugh-Nagumoモデルの研究も少しずつ始める予定であったが，バイドメインAllen-Cahn方程式の分岐問題の研究が予想以上に進展して，そちらに時間をとられたので，バイドメインFitzHugh-Nagumo方程式の研究は，３０年度に開始することになった．これらを総合すると，当初の計画と比べて多少のずれはあるものの，全体的に見れば，研究はおおむね順調に進展している．
|
| Strategy for Future Research Activity |
３０年度は，バイドメインFitzHugh-NagumoモデルやバイドメインHodgkin-Huxleyモデルに現れるパルス波の安定性解析を開始したい．古典的なFitzHugh-Nagumo系におけるパルス波の安定性は１９８０年代前半に示されたが，バイドメインモデルの場合は，バイドメイン作用素が擬微分作用素であるため，安定性解析は古典モデルよりずっと難しい．しかし，これまでの研究で，線形化作用素のスペクトルについての知見が蓄えられているので，この研究を進める準備は整っている．３０年度は，できるところまで研究を進めて，３１年度に完成したいと考えている．
これと平行して，バイドメインAllen-Cahn方程式の研究も，理論と数値シミュレーションの両面から継続する．２９年度に行った広がり波面の数値シミュレーションは，さらに計算精度を上げて，平面波が不安定化した際に現れるギザギザの突起の性質を詳しく調べたい．このギザギザの突起については，その本質に未解明な部分が多く，これがある程度解明されれば，バイドメインモデル全般に関する理解を深めることができると考えている．
また，バイドメインモデルに実用面から携わっている電気生理学分野の研究者も招いて学際的な研究交流の機会を設けて，バイドメインモデルのどのような側面に重点を置いて今後の研究を進めていけばよいかについて議論を重ねたい．
|
| Causes of Carryover |
当初の計画では，研究代表者が２９年度中に渡米して，海外研究協力者の森洋一朗氏と研究討議を行う予定であったが，研究代表者の所属機関が１月に東京大学から明治大学に移り，それに伴うさまざまな予定外の用務が発生したため，渡米を延期することになった．今後，早い段階で海外研究協力者の日本への招へいや研究代表者や分担者の渡米による密接な研究連絡をはかるとともに，関連する分野の研究者を集めて，学際的な国際研究集会を国内で開催する予定である．
|
