2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of spin-polarized scanning tunneling luminescence spectroscopy for elucidation of spin-photon conversion in two-dimensional semiconductors
Project/Area Number |
17K18766
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
今田 裕 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (80586917)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 光物性 / 走査トンネル顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査トンネル顕微鏡(STM)は、高い空間分解能を有するため、微小極限でのみ発現する物質の量子状態を可視化できる。そのため近年では、STMと光技術を融合させ、単原子・単分子で生じる量子ダイナミクスの追求を行ってきた。こうしたSTM研究において、トンネル電子の注入位置や注入エネルギーの制御のみならず、角運動量(スピン, 軌道運動など)の制御まで実現可能となれば、量子ダイナミクスの制御性が飛躍的に向上し、研究舞台を大きく広げると期待される。そこで本研究では、STMにおいて角運動量の制御を可能とするスピン偏極STMの導入/確立および、それを用いたスピン-光変換における電子ダイナミクスの研究を遂行してきた。 本年度は、スピン偏極STMを用いて半導体GaAsにスピン注入および、その応答として生じる光の偏極を測定する技術の確立を行った。測定の結果、注入スピンの向きに応答してGaAs発光が偏極する様子の観測に成功し、GaAsにおけるスピン-光変換プロセスを明らかした。この技術を更に発展させ、原子レベルでこの測定を実現することにより、GaAsにおけるスピン偏極電子の緩和ダイナミクスを可視化することに成功した。また、ここで開発した偏光分光測定技術により、STM探針が発する光(プラズモン発光)も高い偏極率を示すことが明らかとなった。これは、高い偏極率で偏光を発生させる基礎原理を解明した意義と同時に、外部から導入する光の偏極率を増強して物質に伝える“レンズ”となる可能性も示唆している。さらに、プラズモン発光の偏極方向と注入スピンの向きに関して相関分析を行うことにより、両者に線形相関が存在する事を明らかにした。この関係は、従来の解釈では説明できないプラズモン偏光発光に関する新奇現象の存在を示しており、これまで観測し得なかった現象を、スピン偏極STM発光分光法により捉えることが可能になったといえる。
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Research Products
(11 results)