2017 Fiscal Year Research-status Report
Challenge of Self-Propelled Swimming Micro-robot Having Biofuel Cell
Project/Area Number |
17K18853
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
新井 史人 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90221051)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロ・ナノデバイス / マイクロマシン / 燃料電池 / 機械力学・制御 / バイオ関連機器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,生体内で供給可能なグルコースと酸素を燃料とするバイオ燃料電池と,その起電力による電場で発生する電気浸透流により自己推進する自己電気浸透推進機構とからなる新規マイクロ泳動ロボットを提案する.そしてプロトタイプを用いた実験により,その生成速度を実証・評価し,生体医用マイクロロボットシステムの要素技術として完成させる事に挑戦する.計画した課題項目は,下記(1)~(4)である.(1)マイクロスケールプロトタイプの製作:光リソグラフィ等の微細加工技術を用いて,紫外線硬化レジストを構造体の材料とし,サイズが数100 μm 以下のプロトタイプの製作方法を確立する.(2)泳動推進原理の実証及び推進速度評価:マイクロスケールプロトタイプを用いて,理論値から推測される数10 μm~数100 μm/s の自己推進速度を光学顕微鏡観察により検証・評価する.(3)模擬生態環境下での推進速度評価:生体環境を模擬した条件で推進速度評価を行い,生体適合性に関する課題を抽出する.(4)研究総括・まとめ 平成29年度は,主に上記課題項目(1)(2)を実施した.100 μmプロトタイプについてフォトリソグラフィによる製作プロセスを確立した.製作した100 μmプロトタイプ,光学顕微鏡及び画像解析プログラムを用いた推進速度評価システムを構築し,評価方法を確立した.実際に評価を行い,理論値に近しい推進速度が得られることを確認した.また,更に小型化した10 μmプロトタイプについて3次元レーザリソグラフィによる製作に着手し,その製作プロセスが確立しつつある段階である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究実施計画に従い,下記課題項目を実施し,基礎検討と実証実験を行った. (1)マイクロスケールプロトタイプの製作:光リソグラフィ等の微細加工技術を用いて,紫外線硬化レジストを構造体の材料とし,サイズが数100 μm 以下のプロトタイプの製作方法を確立することを目的として,次のサブ項目を実施した.(1-1) プロトタイプの設計,(1-2)製作プロセスの確立,(1-3)100 μm プロトタイプ製作,(1-4)10 μm プロトタイプ製作.(1-3)では,フォトリソグラフィを用いたマスクパターン転写により,100 μmプロトタイプを製作した.(1-4)では,3次元レーザリソグラフィを用いた直接加工により,10μmプロトタイプの製作プロセスの確立を進めている.なお製造時間の節約のため当初の予定サイズ20 μmから10 μmに変更したが,性能評価の観点で特に問題はない. (2)泳動推進原理の実証及び推進速度評価:マイクロスケールプロトタイプを用いて,理論値から推測される数10 μm~数100 μm/s の自己推進速度を光学顕微鏡観察により検証・評価することを目的として,次のサブ項目を実施した.(2-1)泳動原理実証(済),(2-2)評価システム構築(済).100 μmプロトタイプを用いて光学顕微鏡観察による泳動原理の実証実験を行った.その際,画像処理ライブラリであるOpenCVを用いて,光学顕微鏡から得られる画像から画像処理を行い,プロトタイプの推進速度を同定するプログラムを作成した.これを用いて推進速度の実験値が得られ,物理モデルに基づく理論値との比較により,本原理の妥当性を確認した. 以上のように,研究計画にしたがって,バイオ燃料電池を搭載した超小型自己泳動マイクロロボットの基礎が整いつつあり,おおむね順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度から引き続き,以下の課題項目を実施する. (1)マイクロスケールプロトタイプの製作:光リソグラフィ等の微細加工技術を用いて,紫外線硬化レジストを構造体の材料とし,サイズ10 μmのプロトタイプの製作方法を確立する. (2)泳動推進原理の実証及び推進速度評価:マイクロスケールプロトタイプを用いて,理論値から推測される数10 μm~数100 μm/s の自己推進速度を光学顕微鏡観察により検証・評価することを目的として,次のサブ項目を実施する.(2-3)推進速度評価・設計論構築.(2-3)では,前年度に100 μmプロトタイプ用に構築した評価システム及び方法を必要に応じて改良し,それを用いて,10 μmプロトタイプについて推進速度評価を行い,2つのサイズ(100 μm,10 μm)についての比較から,推進速度のサイズ依存性を実験的に明らかにする.実験的に得られた推進速度と物理モデルによる理論値とを比較し,理論モデルの妥当性を検証する.これらの理論及び検証結果をもとに,提案するコンセプトの設計論を構築する. (3)模擬生態環境下での推進速度評価:生体環境を模擬した条件で推進速度評価を行い,生体適合性に関する課題を抽出することを目的として,次のサブ項目を実施する.(3-1)模擬生態環境下での推進速度評価(後期).ヒトの血漿の組成を模擬した液体や,ウシなどの血液を用いて(2)と同様の実験評価を行い,その差異から生体適合性に関する課題を抽出し,考察する.特に,推進燃料以外の物質によって推進速度が劣化しないか,赤血球などとの凝着はどの程度発生するか,などの点に着目し,評価を行う.またそれらの改善案を整理し,(2)における設計論に反映させる. (4)研究総括・まとめを実施する.上記の研究成果について,国内・国際発表を行い,また,国際ジャーナル誌への外国語論文投稿を行う.
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