2017 Fiscal Year Research-status Report
Innovation of mapping technology of coastal topography and sediment size in sediment-cells by using UAV
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17K18898
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 愼司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90170753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 芳満 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20420242)
下園 武範 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70452042)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 海岸過程 / UAV / モニタリング / 漂砂 / 海浜地形 |
Outline of Annual Research Achievements |
数日単位で地形環境が激しく変動する沿岸域と海浜部の地形に焦点をあて、UAVを用いて低コストで広域(~数キロ)の地形環境をマッピングする技術を開発する。現状の海岸地形マッピングでは、地形測量には音響測深技術、底質調査にはサンプリングによるふるい分け調査が用いられており、それぞれ多大な労力と特殊な装置が必要なため、限られた領域で一年に一度程度の頻度でしかデータが取得されない状況にある。本研究では、(1) 海底地形の推定、(2) 海浜陸上部地形の推定、(3) 海浜構成砂礫材料のマッピングに関して、数キロの海岸のデータを一日程度で取得できる低コストで機動性の高いマッピング技術を開発することを目的とする。 研究目的の3つの課題に対して、当初計画通り、本年度は、(1) 海底地形の推定と(2) 海浜陸上部地形の推定について、研究を進めた。海底地形の推定では、新潟海岸、湘南海岸などで現地調査を実施し、海上に高度150mで静止させたUAVによる約20分間の連続画像から波峰線を抽出し、波峰線の移動・変形履歴をもとに、海底地形を逆推定する手法を確立した。地形の逆推定に有利となる長周期の波浪成分を選択的に抽出する技術として、二次元ウェーブレット変換が有効であることなどを示した。また、非線形干渉により、長周期波成分が増幅されるメカニズムを探究した。海浜陸上地形の推定においては、富士海岸、福田浅羽海岸などで調査を実施し、海浜部を高度30m以下の多視点からUAVで撮影した連続画像をもとに、参照点探索アルゴリズムであるSfM(Structure from Motion)技術を用いて、海浜陸上部の高解像度地形DEM(Digital Elevation Model)を作成した。精度を最適化するための標定点の配置とUAVの飛行高度・経路について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の特色は、漂砂系スケール(~数キロ)の海岸地形環境を、高頻度・高解像度・高精度で監視できるシステムを開発することである。そのために、UAVを用いて、(1) 海底地形の推定、(2) 海浜陸上部地形の推定、(3) 海浜構成砂礫材料の情報マッピングに関して、数キロの海岸のデータを一日程度で取得できる低コストで機動性の高いマッピング技術を開発することを目指している。3年間の当初研究計画では、初年度である平成29年度に、最も基礎的な情報である海岸地形に関して、陸上部はSfM、海底部は波峰追跡により、地形を推定する技術を開発し、平成30年度以降には海浜底質のマッピング手法を構築する計画としている。平成29年度の現地調査では、気象・海象条件のほか、海岸利用や漁業との調整などで、円滑な調査ができないことも想定されたが、天候に恵まれたうえ、海岸管理者との密接な連携を実施し、当初計画以上の短時間で効率的な調査を実施することができた。海底地形の推定では、短周期波浪成分が顕著となる撮影海面画像から、背景に潜在する長周期波浪成分を抽出することが重要であることがわかり、これに対して、二次元ウェーブレット解析の有効性を確認できた。さらに、波浪の非線形干渉により、長周期成分が増幅される機構を捉えることに成功し、UAV撮影画像から海面の輝度分布を抽出することにより、沿岸波浪の変形過程まで分析可能であることを示した。陸上部地形の推定では、漂砂系スケール規模の長大地形の推定では、計算機メモリの効率的利用が焦点となることが判明し、これを解決するためには、領域分割と標定点の共通利用が推定精度の維持に本質的となることを見出した。これらにより、計測精度を高める研究開発に重点が置かれてきた従来のモニタリング技術に対して、機動性と低コスト性に優れた実用に耐える堅牢なモニタリングシステムを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究において、海底・陸上部の地形を推定するうえで、UAVの活用が極めて有用であることが示された。平成30年度においては、地形推定手法の適用を拡大するとともに、3つ目の対象課題である、海浜構成砂礫材料のマッピングに着手する予定である。 海浜砂礫のマッピングにおいては、UAVを海浜上10mの高度で沿岸方向に定速移動させながら、直下の連続画像を取得し、表面砂礫の粒径・礫種をマッピングする。グラディエントフィルタやラプラシアンフィルタを用いたエッジ検出などの画像処理技術に加えて、粒度分布の推定には、二次元ウェーブレット解析を用い、漂着ゴミの分離や礫種の推定には、エッジ検出と領域テクスチャー分析を用いる予定である。さらに、これらをクラスター分析することにより、高波イベントごとの漂砂系内の砂礫の移動過程を解明することも検討する。 平成29年度の調査において、海浜上10mの高度で撮影した画像群を既に取得しているため、まずは、これらの画像を再分析することから始める。対象海岸としては、地形情報の取得が終了した富士海岸を想定するが、台風の来襲など気象条件に応じて、機動的に調査地を選定することも念頭に置く。これにより、本研究で開発するモニタリングシステムの機動性・堅牢性を確認するとともに、従来捉えることが困難であった、台風前後の急激な地形変化を議論することも可能となり、学術の進展に貢献することを期待している。また、本課題とは別に、海岸に設置した監視カメラから、砕波密度の推定を介して海底地形を推定する手法も開発しており、同手法をUAV取得画像にデータ同化技術を介して多重的に適用することで、短周期波浪のみが卓越する条件においても、地形推定の高精度化を図る予定である。 研究計画調書に記載した研究管理マトリクスによる研究の進捗評価を毎年度末に実施し、PDCAサイクルのもとで研究を推進する。
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