2017 Fiscal Year Research-status Report
電気化学的界面を用いたナノ構造制御による新規熱電材料の探索
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17K19060
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
清水 直 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (60595932)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 物性実験 / 電界効果 / 電気化学 / 熱電効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「イオン液体と半導体界面で発生する超強電界や電気化学反応を制御することで二次元電子系を人工的に作り出す手法を確立すること」、そして「本手法を様々な半導体材料に適用し、低次元物質・ナノマテリアルの熱電効果の研究を飛躍的に推進すること」を目的とする。平成29年度は、申請書に記載した研究計画に従い、「電気化学的界面を用いた、膜厚・キャリア密度の同時制御と熱電効果測定の確立」を中心とした研究を行った。具体的には、以下の研究を行った。
①電気二重層トランジスタでは、イオン液体の電気化学窓より小さいゲート電圧を印加した場合、静電的にキャリアが蓄積される。一方、それより大きな電圧を印加すると、固液界面における電気化学反応により固体最表面の原子が溶解し、試料の厚さを減少させることができる(Shiogai et al., Nature Phys. 12, 42 (2016).)。この電化学反応下における、薄膜試料の熱電効果のその場測定を行うシステムを構築した。化学反応を低温(室温以下)で進めることで、反応のスピードを制御し、さらに薄膜試料とイオン液体の積層構造に対して積層方向と垂直に温度勾配を与えて熱起電力を測定した。実際にこの方法をFeSe薄膜に適用し、熱電効果の膜厚依存性、キャリア数依存性の測定を行った。 ② イオンの種類による電気化学反応の進行するスピードや、反応(溶解)の均一性の検討を行った。イオン分子の構造を変えて電気化学反応を観察したところ、分子の大きさが大きく粘性が高くなるほど、反応の進行が抑えられることが分かった。さらに、イオン液体の分子の構造を変えると、反応速度のみならず、エッチングされる材料の電子物性を変調・制御できることを発見した。
今年度に行った研究成果は、国内学会・国際学会等様々な場所で報告した。また、上記①は論文雑誌に投稿中、②は論文として出版することができた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画は、「電気化学的界面を用いた、膜厚・キャリア密度の同時制御と熱電効果測定の確立」であった。申請者は上記「研究実績の概要」に報告したように、申請書に記載した研究計画に従って研究を遂行した。予定していたスケジュールで研究を進めることができたので、平成30年度の研究にスムーズに移行しているところである。このように、平成29年度の研究計画に従った研究を無事に完成させることが出来たことから、「当初の計画どおりに進展している。」と考えている。 平成29年度の実験結果のいくつかはすでに論文として発表することが出来ており、また国内外の学会・研究会・ワークショップにて報告してきた。さらに、本研究成果を利用した共同研究が申請者と他の研究グループとの間で開始された。
平成30年度への研究進捗状況・準備状況は申請書の計画通りとなっている。最終年度であるので、この研究課題で得られた結果を、出来る限り論文および学会で報告する予定である。本研究課題を十分に達成できるよう、本年度も申請書に従った計画的な研究を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
上記「研究実績の概要」および「現在までの達成度」で報告したように、平成29年度は順調に研究を進めることができ、これまでのところ、計画は予定通りに進めることが出来ている。 当初の研究計画を簡単に述べると、平成29年度(初年度)は「電気化学的界面を用いた、膜厚・キャリア密度の同時制御と熱電効果測定の確立」、平成30年度(最終年度)は「超薄膜領域で観測される異常な熱電特性の研究」である。平成29年度の研究は、30年度の土台となるものであるが、29年度は研究が順調に進行したため、30年度の研究進捗状況・準備状況は計画通りとなっている。 具体的には、29年度は測定系・実験系の構築であったが、30年度はさまざまな半導体材料に対して、電気化学反応中における熱電効果のその場測定を展開する。最終年度であるので、この研究課題で得られた結果を、出来る限り論文および学会で報告したいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)平成29年度の物品費として消耗品費が含まれているが、価格が安いものでも購入消耗品物品の詳細な比較検討(いくつかの業者間での見積もり金額の比較など)を行い、経費を削減した結果、差額が生じた。
(使用計画)経費削減の結果、差額が生じたが、これは平成30年度の実験に必要な消耗品費として有効活用する。具体的には、熱電効果測定用ステージの作製に必要な金属材料、熱電対、温度計の購入を検討している。
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[Journal Article] Enhancement of superconducting transition temperature in FeSe electric-double-layer transistor with multivalent ionic liquids2018
Author(s)
Tomoki Miyakawa, Junichi Shiogai, Sunao Shimizu, Michio Matsumoto, Yukihiro Ito, Takayuki Harada, Kohei Fujiwara, Tsutomu Nojima, Yoshimitsu Itoh, Takuzo Aida, Yoshihiro Iwasa, Atsushi Tsukazaki
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Journal Title
Phys. Rev. Materials
Volume: 2
Pages: 031801(1)-(6)
DOI
Peer Reviewed
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