2018 Fiscal Year Research-status Report
Engineering application of hydrogen generation in natural environments
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17K19081
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大竹 翼 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80544105)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 蛇紋岩化 / 水素 / オフィオライト / 超苦鉄質岩 / M-S-H |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度の天然岩石試料を用いた実験結果より、特定の蛇紋岩を除いて蛇紋岩化の程度の低いハルツバージャイトの試料が高い水素生成量を示すことが明らかになった。したがって、H30年度はその要因を明らかにするために、蛇紋岩化の程度の低い北海道幌満産のハルツバージャイトを用いて、岩石試料にMgO, CaO, SiO2, 磁鉄鉱などの化合物や鉱物を添加することによって、水素生成実験を行なった。その結果、実験開始後1日目においては、SiO2を添加した実験系において他の系よりも水素生成量が多い結果が得られた。溶液分析の結果は、シリカを加えた系では、他の系と比較して溶存Si濃度が増加していたのに対し、溶存Ca、Mg濃度の減少およびpHの低下がみられた。これはSiO2の添加によって二次鉱物の生成とpHの低下が促され、結果として一次鉱物である輝石の溶解が促進されたためではないかと考えられる。これはH29年度に行なった天然試料を用いた実験において、ダナイトよりも輝石に富むハルツバージャイトで水素生成量が高い傾向が得られたことと整合的であり、H30年度の添加実験より低温蛇紋岩化作用における水素生成量に与える一つの要因を明らかにすることができた。また、生成した二次鉱物については溶存成分と熱力学的な考察からM-S-Hのような準安定相が考えられ、100度以下のような環境においては、鉱物の溶解や溶存成分のコントトールにはこのような準安定相を考慮することが必要であることも示された。 これらの研究成果は、日本地球惑星科学連合2019年大会やEuroclay 2019などで発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画を概ね達成することができた。初年度の天然試料を用いた実験結果を踏まえ行なった添加実験によって、低温蛇紋岩化作用における水素生成量に与える要因について明らかにすることができた。さらに添加実験の結果は、様々な天然試料を用いた時の水素生成量の差異と整合的であり、天然環境においてもこのような要因が重要であることを示唆している。これまでの先行研究ではシリカ濃度が低いことが水素生成には重要であることが提案されていたが、低温環境ではむしろ非平衡な環境や準安定相の沈殿により高いシリカ濃度で水素生成量が増加することを示せたことは画期的であると考える。今後は、添加するシリカ濃度や反応時間を変化させることにより、より定量的な影響について明らかにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の添加実験は一定の量のシリカしか添加していなかったため、水素生成量を最大化するための最適なシリカ量や反応時間は明らかになっていない。また、水素の分析については、実験中のリークの可能性が考えられるため、正確な水素生成量の見積もりにまで至っていない。従って最終年度は水素生成量は最大化・最適化するための条件や実験システムまた分析方法を再検討する必要がある。また、二次鉱物の生成についてはこれまでのところ熱力学的な考察のみで直接的な証拠が得られていない。今後、より固体が観察しやすい条件で実験を行い、SEMやTEMによる観察を行う必要がある。
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Research Products
(5 results)