2017 Fiscal Year Research-status Report
生体反応を利用した新規な自励振動高分子材料系の構築
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17K19148
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 亮 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80256495)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子ゲル / 刺激応答材料 / 生体材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体が示す高度な自律性に動機付けされた合成材料として、我々は自励振動高分子材料と呼ばれるコンセプトを世界に先駆けて提唱し、その研究を先導してきた。自励振動材料の応用研究へ向けた道を拓くため、本研究課題では、生理条件下で駆動する自励振動高分子材料の創出を目的とする。本研究課題が達成されれば、生体内で駆動する自律的なマイクロマシンや、周期的に薬物を放出する自律的ドラックデリバリーシステムなど、刺激応答材料を凌駕する革新的な自律性を持つ生体材料創製への大きな足掛かりとなると考えられる。このように、生理条件下で駆動する自励振動材料システムを構築し、生体材料への応用研究の足掛かりとすることが本研究の最終目的である。その第一段階としてまず、以下の検討をおこなった。高分子鎖を三次元的に架橋することで、高分子鎖の親疎水性変化に同期したゲルの膨潤収縮振動が起こる。この時、膨潤収縮に伴いゲルの弾性率などの力学物性も周期的に変化すると考えられる。このような力学物性の変化を起こすゲル上で細胞培養を行い、周期的な細胞周辺の力学環境変化が細胞挙動に与える影響を検討した。近年、細胞周辺の力学的環境が幹細胞の分化などの挙動に大きく影響を与えることが判明している。更に、刺激応答性ゲルを用いて刺激により力学物性を変化させると、その動的な力学環境変化を細胞が記憶するという非常に興味深い結果が報告されている。本検討では、外部刺激により力学物性を周期的に変化させることで、力学物性変化に対して細胞がどのような応答を示すかを調べた。周期的に力学環境が振動する自励振動ゲル上での細胞培養が可能となれば、これまでの刺激応答性細胞培養材料では起こり得なかった結果が得られる可能性も大いに期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で述べた内容とともに、ゲルの蠕動運動による物質輸送や脈動流生起の実現の他、自励振動ポリマーブラシ、自励振動ミセル、自励振動ベシクル(非架橋/架橋型)、自励振動コロイドソーム、人工アメーバ(自律的にゾル―ゲル転移する自励振動高分子溶液)の作製が実現され、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
生理条件下で駆動する自励振動ゲルシステムの構築をさらに推し進める、周期的に力学環境が振動する自励振動ゲル上での細胞培養が可能となれば、これまでの刺激応答性細胞培養材料では起こり得なかった結果が得られる可能性も大いに期待できる。これは従来のBZ反応を用いた自励振動高分子材料ではその過酷条件のために決して成し得なかったものであり、これらの検討を行うことで自励振動高分子材料の応用研究への道筋を示し、自律性を持った機能性材料という新規材料科学分野を更に応用発展させることが出来ると考えられる。
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