2018 Fiscal Year Research-status Report
生体反応を利用した新規な自励振動高分子材料系の構築
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17K19148
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 亮 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80256495)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | 高分子ゲル / 刺激応答材料 / 生体材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体が示す高度な自律性に動機付けされた合成材料として、我々は自励振動高分子材料と呼ばれるコンセプトを世界に先駆けて提唱し、その研究を先導してきた。自励振動材料の応用研究へ向けた道を拓くため、本研究課題では、生理条件下で駆動する自励振動高分子材料の創出を目的とする。本研究課題が達成されれば、生体内で駆動する自律的なマイクロマシンや、周期的に薬物を放出する自律的ドラックデリバリーシステムなど、刺激応答材料を凌駕する革新的な自律性を持つ生体材料創製への大きな足掛かりとなると考えられる。このように、生理条件下で駆動する自励振動材料システムを構築し、生体材料への応用研究の足掛かりとすることが本研究の最終目的である。 その第一段階としてまず、ブロックコポリマー(BCP)を用いた検討を行った。BCPはセグメントごとに独立した機能を付与できるため、より精密に制御された材料設計が可能である。近年では自励振動高分子及び親水性高分子からなるAB型自励振動BCPの設計により、高分子ミセルの自律的な形成・崩壊振動が報告されている。これまで分散安定性のみを担っていた親水性セグメントにBrO3-ソースとしての機能を新たに付与したAB型自励振動BCPを設計・合成することで、外部からの臭素酸塩添加なしの条件下における自律的かつ周期的なミセルの形成・崩壊振動の実現を目指した結果、濃厚溶液系での振動が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で述べた内容とともに、ゲルの蠕動運動による物質輸送や脈動流生起の実現の他、自励振動ポリマーブラシ、自励振動ミセル、自励振動ベシクル(非架橋/架橋型)、自励振動コロイドソーム、人工アメーバ(自律的にゾル―ゲル転移する自励振動高分子溶液)の作製が実現され、順調に進展している。さらに新しい解析法により、そのナノスケールレベルでの動的挙動が明らかにされつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
生理条件下で駆動する自励振動ゲルシステムの構築をさらに推し進める、周期的に力学環境が振動する自励振動ゲル上での細胞培養が可能となれば、これまでの刺激応答性細胞培養材料では起こり得なかった結果が得られる可能性も大いに期待できる。これは従来のBZ反応を用いた自励振動高分子材料ではその過酷条件のために決して成し得なかったものであり、これらの検討を行うことで自励振動高分子材料の応用研究への道筋を示し、自律性を持った機能性材料という新規材料科学分野を更に応用発展させることが出来ると考えられる。現在、そのための分子設計戦略が固まりつつある。
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