2019 Fiscal Year Research-status Report
剛直ラセン構造をもつ脂肪族炭化水素高分子材料と機能
Project/Area Number |
17K19150
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
竹内 大介 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (90311662)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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Keywords | ラセン高分子 / ポリオレフィン / ブロック共重合体 / パラジウム触媒 / ランダム共重合 / 高分子反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、かさ高い置換基をもつオレフィンの重合を行うことで、剛直なラセン構造を有する脂肪族炭化水素高分子の合成を行い、さらに結晶性の剛直ラセンブロックと非晶性の多分岐ポリオレフィンブロックを含むマルチブロック共重合体を合成し、その諸性質を、共重合体組成を変えることで調整できる新しい 高分子材料を創製することである。 昨年度までに、パラジウム触媒によるtert-ブチルエチレンの重合が進行し、立体規則性がイソタクチックに制御された、らせん構造を有するポリマーが得られることや、シクロアルカン構造および4級炭素を含むモノマーの重合も同様に進行すること、tertブチルエチレンとオレフィンとのトリブロック共重合体の合成や、環状アセタール構造やオルトエステル構造を有する嵩高いオレフィンとオレフィンとの共重合が可能であることを見出している。 今年度は、立体障害が小さく反応性のエポキシ基を有するイソプレンモノオキシドの重合について検討を行った。様々なパラジウム触媒を用いた検討を行ったが、イソプレンモノオキシドの単独重合体を得ることはできなかった。 最近、当研究室では、パラジウム触媒によるオレフィンのリビングポリマーに対して一酸化炭素を作用させることでアシル錯体へと誘導できること、またそれに対してアミノ末端をもつポリエチレングリコールを反応させることで、対応するブロック共重合体を合成できることも見出している。そこで、パラジウム触媒によるtert-ブチルエチレンの重合を行い、一酸化炭素及びアミノ末端をもつポリエチレングリコールを反応させたところ、ブロック共重合体と考えられるピークがGPCにおいて観測された。一方で、生成物には原料のポリエチレングリコールも含まれており、共重合体との分離については達成できていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、これまでにtert-ブチルエチレンとオレフィンとのブロック共重合を達成し、ジブロック共重合体、トリブトック共重合体の合成に成功している。ポリtert-ブチルエチレンブロックはラセン構造をとっている一方、ポリオレフィンブロックは結晶性が低く、ハード・ソフト型の脂肪族炭化水素ブロック共重合体である。これまでの検討では、極性基を含むかさ高いモノマーの単独重合については達成することはできていない。しかし、昨年度までにオレフィンとのランダム共重合および生成ポリマーの加水分解に成功している。さらに今年度はtert-ブチルエチレンのリビング重合・末端の高分子反応を利用することで、ラセン構造をもつ炭化水素ポリマーブロックと、極性基を含むポリマーブロックからなるブロック共重合体にも成功した。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度見出しているtert-ブチルエチレンのリビング重合・末端の高分子反応を利用し、結晶性の剛直ラセンブロックと、ポリスチレンを始めとする多様なポリマーとのブロック共重合体合成へと展開する。末端高分子反応により得られたブロック共重合体については、これまでのところブロック共重合体と原料のホモポリマーとの分離はできておらず、ブロック共重合体の物性を評価するには、ブロック共重合体を単離する必要がある。溶解性の違いを利用した分離方法や、分取HPLCを用いる方法などを利用して、ブロック共重合体の単離を行う。さらに、これらのDSC測定を行い、ミクロ相分離について評価する。
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Causes of Carryover |
研究代表者が2018年度に東京工業大学から弘前大学に異動し、研究設備の整備に若干時間を要した。また、2018年度の秋に最初に学生が研究室に配属されたため、実際に本格的に研究活動を開始するのが半年ほど遅くなった。一方で、本格的に研究活動を開始してから、より詳細に検討する必要のある研究成果が得られたことから、期間を1年間延長することにした。次年度は当該研究成果をまとめ、論文の投稿を行う。次年度使用額分については、追加実験のための試薬等の物品費や、研究成果を学会で発表するための旅費に使用する予定である。
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