2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of molecular probes for metabolic reaction analysis at specific environmental sites in vivo
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17K19193
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野中 洋 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (80579269)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 人工代謝物 / 分子プローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、化学的な工夫を埋め込んだ人工的な代謝物を利用して、特定の部位(環境)での代謝反応を高感度・高精度に得る手法の開発を目指した。どのような場所で起こった反応なのかを明らかにできる工夫として、分子ロジックゲートを用いた。ロジックゲートの選択条件には、特定の環境と、特定代謝酵素などの2条件以上を用い、複数条件が満たされるときのみ代謝されるAND型ロジックゲート人工代謝物の開発を目指した。 目標の達成に向けて、昨年度は、1つのコンセプトモデルとして、いくつかの疾患に関与することが知られている酵素、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)を標的とした。GGTの立体構造、及び、実験データより、GGTの基質認識に重要な基質部位(アミノ基)を明らかにし、その部位を酸化刺激応答性の官能基によりマスクした分子を設計した。また、この人工代謝物は、GGTの反応前後で蛍光強度が変化するように設計した。合成した蛍光色素を含む人工代謝物は、酸化的環境とGGT共存という2条件がそろった際に、大幅な蛍光強度変化が観測され、ANDロジックゲート型人工代謝物として機能することを確認した。 本年度は、昨年度確立した酸化的環境のGGTに対する分子設計指針を利用して、蛍光色素部位の代わりに薬剤部位を含む分子を設計・合成した。GGTの基質認識に重要なグルタミン酸のアミノ基を酸化刺激応答性のフェニルボロン酸を含む官能基によりマスクし、GGTの反応前後で細胞毒性を発揮することが期待できる薬剤を放出するように設計した。実際に、GGT発現量の多いがん細胞に対して、過酸化酸素の有無で酸化刺激を加えたものの、十分な応答差を確認できなかった。過酸化水素を分解する酵素カタラーゼを添加した条件では、細胞生存率に差が見られたことから、細胞が定常的に産生している過酸化水素に応答しているものと考察している。
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