2017 Fiscal Year Research-status Report
カルシウムシグナリングによる選択的mRNAスプライシング制御原理の新規解明
Project/Area Number |
17K19232
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増田 誠司 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (20260614)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | mRNA / カルシウム / 選択的スプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
カルシウムは、細胞内セカンドメッセンジャーの1つである、そのシグナルの一部は核に伝えられて特異的な遺伝子群の発現を促進する。これまでカルシウムシグナルによる遺伝子発現はもっぱら転写のレベルで解析されてきた。 mRNAの選択的スプライシングは、ゲノムにコードされる遺伝子の数を遙かに超えた数のタンパク質を発現させるメカニズムであり、選択的mRNAスプライシングを受ける遺伝子の数は、生物の高等化や複雑化に伴って多くなる。このため、選択的mRNAスプライシングは生物進化を理解する上で重要な研究課題と捉えられている。加えて、選択的mRNAスプライシングヒト遺伝病の原因究明や治療法開発の鍵となると考えられており、その分子機構の解明は大きな関心を持たれている。しかし、ヒトにおける選択的スプライシングの分子機構は十分にわかっていない。また、カルシウムシグナルとのクロストークについても知られていなかった。 研究者は、ヒトにおけるmRNAの選択的スプライシングの新規因子としてCHERPがカルシウムシグナルに応じて新たな分子機構により制御することを見いだした。カルシウムはセカンドメッセンジャーとして迅速な細胞応答を実現しているだけでなく様々な細胞内情報伝達系を介して遺伝子発現にも寄与していることが知られてきたが、カルシウムシグナルと選択的mRNAスプライシングを結びつける知見は初めてである。本研究は、カルシウム代謝と連動した選択的mRNAスプライシングの分子機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エキソンアレイ解析を含むCHERPの機能解析から、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの疾患関連遺伝子を含む様々な遺伝子の選択的スプライシングを制御していることを観察した。免疫沈降と質量分析からは、CHERPが3’スプライス部位を決定するU2 snRNPとも強く相互作用することを見いだした。さらにCHERPはカルシウム濃度を変化させるとU2 SnRNP等のスプライシング因子からヒストンへと結合が変化した。これら一連の解析から、CHERPはカルシウムシグナルと連動して新規の分子機構でmRNAの選択的スプライシングを制御する新規因子であると考えられた。 次いで、CHERPが制御するスプライシングをゲノムワイドに観察することとした。 CHERPあるいは対照としてGFPをそれぞれに特異的なsiRNAを用いてノックダウンし、リアルタイムPCRや抗CHERP抗体によるウエスタン解析によりダブル確認した。その後次世代シーケンス解析を行い、その結果を標準化して解析結果をまとめた。mRNAに生じた変化として選択的3’スプライスサイト選択、選択的5’スプライスサイト選択、相互排他的エキソン選択、イントロン保持、エキソンスキップの5種類に分けて解析した。解析した5種類の分類においてイントロン保持、選択的5’スプライスサイト選択、選択的3’スプライスサイト選択、エキソンスキップ、相互排他的エキソン選択の順に頻度高く検出された。イントロン保持タイプはmRNAスプライシングが阻害されていることを表しており、CHERPノックダウンで核にmRNAが蓄積する現象と一致した。このように今後の分子メカニズムを含む詳細な解析の基盤を構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
影響を受けたmRNA種が持つ共通の特徴を解析することでCHERPによるmRNAスプライシングを阻害するメカニズムを明らかする。次いでカルシウムシグナルによる影響を明らかにする。具体的には、解析した5種類の分類において、それぞれの分類で共通する配列情報を抽出し、3’スプライスサイト、5’スプライスサイトのサイトスコアの比較や、これらの遺伝子領域を含むミニ遺伝子の作製、さらいはサイトスコアを変更する変異を導入したミニ変異遺伝子の作製、ならびに細胞への導入とその影響を詳細に観察する。これらの解析によりCHERPが制御する選択的mRNAスプライシングの分子メカニズムとカルシウムシグナルとの関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
次世代シーケンス費用を計上していたが、本研究経費を使用することなく解析を行うことができた。このため当初計上していた費用を使用せずに済んだ。この費用は、研究を迅速に推進するための試薬の購入や研究推進のための人件費にあてることで研究目標を達成するために使用する。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Inhibition of mRNA Maturation by Compounds Which Have a Flavonoid Skeleton2017
Author(s)
Kurata M, Morimoto M, Kawamura Y, Mursi IFA, Momma K, Takahashi M, Miyamae Y, Kambe T, Nagao N, Narita H, Shibuya Y and Masuda S
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Journal Title
Biochemistry and Molecular Biology
Volume: 2
Pages: 46-53
DOI
Peer Reviewed
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