2017 Fiscal Year Research-status Report
Validation of the theoretical model by actual measurements of each component that regulates phloem translocation in trees
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17K19291
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
檀浦 正子 京都大学, 地球環境学堂, 助教 (90444570)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | 師液流 / 膨圧 / パルスラベリング / 師液流モデル / 炭素循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒノキ人工林において、研究課題に関する測定を行なった。師部サンプルを採取し、染色後顕微鏡観察を行い、通導している師管の数(n)と半径(r)を測定した。師管の数は、樹木直径が大きくなるほど多くなり、師管の半径は樹木直径が大きくなるほどやや大きくなった。また師部を含む樹皮サンプルを水に浸し、師液を採取して糖濃度[C]および師液の粘性(η)を測定した。糖濃度および粘性は樹木直径が大きくなるほど高くなった。膨圧は、浸透圧+水ポテンシャル-重力ポテンシャルで求められるので、オスモメーターにより師部サンプルの抽出液の浸透圧を測定し、水ポテンシャル、重力ポテンシャルとあわせて膨圧を推定し、シンクとソースの圧力差(ΔP)を推定した。樹高20m程度の樹木で最大ΔPは0.6MPa であった。Lは経路の長さすなわち樹高であり、これらの値を式にあてはめ樹木単位の師部輸送量(Fc)を推定した。 Fc=f*(π*r^4)/(8*η*L)*n*ΔP*[C] この量は、林分単位に換算すると、林分の総光合成量の30%程度を占める計算になった。 今後は、師部輸送速度をラベリングで実測し、モデルと比較する予定である。 また2017年9月に行なわれた国際森林学会(IUFRO)で乾燥条件下の師部輸送機能と機能不全(Phloem Function and Dysfunction under Drought)と題するセッションを、フランス・フィンランドの共同研究者と共に開催し、師液輸送に関する実測とモデリングの議論を行なった。セッションに関して国際誌TreePhysiologyで特集号を組むことになっており、乾燥条件下における師液輸送のトピックに関するレビューを執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題を遂行するための、各要素の測定について予備的な測定がおおむね完了した。師部の顕微鏡観察は樹種によっては困難であったが、いくつかの樹種では師管の画像をえることができ、特にヒノキに関しては鮮明な画像を得てパラメーターを取得することができた。今後はラベリングにより、師液の移動速度を実測し、それぞれの実測値をあてはめて、モデルを検証する予定である。また、師液流モデルの第一人者であるHoltta氏と共に、国際学会のセッションを開催することができ、今後のモデリングの計画についても議論することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は産休・育休につき研究を中断する予定である。国際誌TreePhysiologyに掲載予定の乾燥条件下の師部輸送機能と機能不全と題する特集号に関する執筆・編集作業は継続し、平成30年度に出版予定である。平成31年度に研究を再開し、ラベリングによって師部輸送の実測を行いモデルを検証する。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、師部の顕微鏡観察とそれに適する樹種の選択、師部輸送速度以外のパラメータの測定を行ったが、研究代表者の妊娠に伴い、高所作業が伴う師部輸送速度を実測するための高木でのラベリングを見合わせた。そのため、ラベリングにかかる消耗品等の購入を控え、次年度使用額が発生した。
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