2018 Fiscal Year Research-status Report
工場野菜の機能性成分や香気成分の含有量を高めるための、情報伝達気体の曝露
Project/Area Number |
17K19312
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
谷 晃 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (50240958)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | スイートバジル / エチレン / オシメン / CO2 / リナロール / ユーカリプトール / エストラゴール |
Outline of Annual Research Achievements |
[目的] 植物工場は、安全かつ計画的な食料の供給を目的とした、人工栽培システムである。本研究では、栽培する植物の生産性と機能性物質量に着目して、情報伝達物質として代謝活性を変化させる可能性のある気体や光合成や形態を変化させる可能性がある気体を植物に曝露することによって、植物の生産性と機能性成分含有量を調節可能か検討した。 [方法] 実験には、スイートバジル(Ocimum basilicum)を用いた。チャンバーを用いて高濃度CO2(1000 ppmまたは5000 ppm)、エチレン(0.5 ppm)およびオシメン(0.2 ppb、1 ppbおよび5 ppb)の3種類の気体をそれぞれ植物に曝露し、10日から20日間の範囲で水耕栽培した。光源にはLEDランプを用い、植物の葉での光合成有効光量子密度(PPFD)を170 umol m-2 s-1とした。収穫調査時に、植物の展開葉を約1 g採取し、香気成分を抽出した後、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)で分析した。 [結果と考察]スイートバジルの含有成分であるユーカリプトールおよびリナロールの含有量は、CO2 1000 ppm区において有意に上昇したが(p<0.05)、非テルペン芳香族炭化水素であるオイゲノールおよびエストラゴールの含有量は有意に変化しなかった。エチレン区において葉長と葉幅は有意に低い値を示した(p<0.05)。またSPAD値はエチレン区、高濃度CO2区双方で大気濃度区に対して有意に高い値を示した(p<0.05)。オシメン曝露によるスイートバジルへの有意な影響は見られなかった。 上記の結果より、高濃度CO2によって光合成が高まることで、バジルの機能性物質の含有量を高めることができた。エチレンは葉面積を小さくしたため、植物工場での食用の栽培には向かないと考えられる。オシメンの効果は見られなかった。なお、今回の3種の揮発物の曝露実験によって肝発がん性が報告されているエストラゴール含有量を有意に変えることはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スイートバジルを用いて、3種の異なる気体の曝露実験を行え、概ね計画通りに進められた。
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Strategy for Future Research Activity |
スイートバジルに関しては、2019年度にサリチル酸メチルを曝露する。濃度設定の調整に時間を要するが、実験は遂行できる。 ワサビについては、2019年度に実験を実施する。研究室内実験だけでなく、静岡県農林技術研究所との共同研究として、研究所が維持管理する先端実験施設(AOI PARC)を用いた実験を実施し、環境制御下での情報伝達気体の影響を調べたい。
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Causes of Carryover |
わずかに残金がでたが、誤差の範囲内である。年度末に無理に消化することを避けた。
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