2017 Fiscal Year Research-status Report
Exploration of microbial marker for prediction of metabolic disorder in ruminants
Project/Area Number |
17K19315
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小池 聡 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (90431353)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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Keywords | ルーメン発酵 / ルーメン細菌 / ウシの代謝疾患 / 生産病 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のウシ生産においては効率やコストの観点から穀物飼料を多給する傾向にあり、これに伴い第一胃(ルーメン)内発酵異常に端を発する代謝性疾患(生産病)が問題となっている。本申請課題ではルーメン発酵の主体である細菌群のうち、生産病と連動して増減する細菌をバイオマーカーとして活用することの可能性を検討することを目的とした。 平成29年度はウシ口腔内の反芻残渣(ルーメン内容物の吐き戻し)を用いてルーメン細菌群の構成を正確に把握するための手法確立を目指した。ルーメンカニューレを装着したウシから口腔残渣とルーメン内容物を同時間帯に採取し、両者の細菌群構成を変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法およびreal-time PCR法により解析した。また、口腔内反芻残渣の採材の方法(用いる道具、採取時間)についても検討した。 口腔内の反芻残渣とカニューレから採取したルーメン内容物おいて、両者の細菌叢の類似度は高く、主要細菌群の分布量に有意な違いは認められなかった。採材方法についても、反芻が活発に起こる給餌後3から5時間において、安定的に口腔内の反芻残渣が採取できることを確認し、複数の作業者が行った場合でも同様の採材が可能であることを確認した。さらに、採材は1頭あたり5分以内で終えられることから、迅速かつ低侵襲性の採材が可能であることも確認できた。サンプルの保存性についても検討を行い、既報に基づいて調製した核酸分解抑制バッファーにおいて、少なくとも室温で1週間の保存が可能であった。 以上より、ルーメン細菌叢解析に口腔内の反芻残渣が利用できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採材法の検討に想定よりも時間を要した。これについてすでに問題は解消しており、今後の採材はスムーズに行える状況にあるため、平成30年度には遅れを取り戻せるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した手法については、妥当性の検証を行った上で論文化を目指す。 同時に、当初の予定どおり生産病の発症リスクが高い肥育牛や周産期の乳牛から継時的に口腔内反芻残渣を採材し、随時分析を進めていく。対象個体において採食量の低下、体重増加の停滞、エネルギーバランスの悪化、もしくは繁殖障害といった生産病の兆候が認められた場合には、発症よりも前に遡って口腔内反芻残渣の菌叢(ルーメン細菌叢)を解析し、生産病発症牛にのみ認められる細菌の増減について検討する。 一方、採材は実験環境ではなく、実際の生産動物として飼養している個体より行うため、生産病を発症しないことも大いに考えられる。しかし、採材対象とする肥育期や周産期には給与飼料の構成が大きく変化することから、ルーメン細菌叢の変動は必ず起こる。したがって、採材期間中に増減する細菌を特定すれば、生産病との関連が疑われる候補細菌群として今後の研究に繋げられると考えている。さらに、肥育期または周産期のルーメン細菌叢の変動を多個体について継時的に実施した研究例は極めて少なく、この期間中のルーメン細菌叢変動に関して価値のある基礎的知見が得られるものと期待している。
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