2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K19340
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高橋 康弘 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10154874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 由実 大阪医科大学, 医学部, 講師 (80268193)
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Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 鉄硫黄クラスター / 生合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、モデル真核生物である出芽酵母の鉄硫黄(Fe-S)クラスター生合成系を改変することで、酵母ミトコンドリアにおける唯一の必須機能をバイパスさせ、“ミトコンドリアを持たない真核細胞”をはじめて実験的に創り出すことを最終的な目標としている。H29年度は、バクテリアのFe-Sクラスター生合成系であるNIFマシナリーの2成分(NifSとNifU)を酵母の細胞質で発現させ、CIAマシナリーと協調してクラスターを生合成できるように改変することを目指して、以下の研究を進めた。 ピロリ菌のNifSとNifUについて、まず、生化学的な性質ならびに構造を解析した。NifSについては、結晶内での酵素反応によって、反応中間体の構造を捉えることに成功した。すなわち、基質L-システインがNifSの活性中心であるピリドキサール-5’-リン酸にシッフ塩基を介して結合している構造を明らかにした。NifUについては、結晶化することが困難であったため、NifU二量体とNifU-NifS複合体の構造をSAXSにより解析した。また、NifUの3つのドメインを個別に発現・精製し、NifU二量体間の会合部位やNifSとの相互作用部位を検討した。 nifSとnifUをクローン化し、細胞質で発現させるよう出芽酵母に導入した。一般に、Fe-Sクラスターの生合成系を過剰に発現させると有害な影響が現れるため、タンパクの発現量を変化させて酵母細胞の生育に対する影響を調べ、NIFマシナリーの適正な発現量が担保できる条件を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NIFマシナリーの2成分(NifSとNifU)について、生化学的な解析ならびに構造解析から、Fe-Sクラスター生合成系としての基本的なアウトラインを明らかにした。これにより、酵母の細胞質においても機能できる見通しが得られた。また、酵母細胞質において、これらのタンパク質を適正な量で発現させる目処が付いた。
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Strategy for Future Research Activity |
NIFマシナリーを細胞質で発現させることによって、実際にミトコンドリアISCマシナリーの必須機能(細胞質や核のFe-Sタンパク質のクラスター形成)がバイパスできるかどうか、以下の (a), (b) の方法で段階的に検討する。 (a) ミトコンドリア内膜の輸送体Atm1は、ミトコンドリアで作られるFe-Sクラスターの一部を細胞質へ輸送する、生育に必須なタンパク質である。この遺伝子の破壊株が得られれば、Atm1の機能がバイパスされて、細胞質だけでFe-Sクラスターが形成されることを確認することができる。なお、このAtm1破壊株ではミトコンドリアのISCマシナリーは正常に保たれるため、TCAサイクルや酸化的リン酸化は正常に機能すると考えられる。 (b) ISCマシナリーの中心成分であるNfs1(システイン脱硫酵素、バクテリアIscSのホモログ)をコードする必須遺伝子を破壊することで、ミトコンドリア内のFe-Sクラスター生合成系を欠失させる。この変異株では、ミトコンドリア内のTCAサイクルや酸化的リン酸化が機能しなくなると予想されるため、生育にはラフィノースを炭素源とした富栄養培地を用いる計画である。
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Causes of Carryover |
nifSとnifUを発現させた酵母株が想定外の性質を示したため、予定していた実験の実行を延長して、慎重に検討した。そのため、残金が発生した。次年度は、Atm1やNfs1といった必須遺伝子の破壊に挑戦するが、さらなる困難さが予想されるため、破壊株の構築に必要な合成オリゴDNAやクローニングに必要なキット・試薬の購入、また種々の培養条件を検討するため費用にあてる計画である。
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