2017 Fiscal Year Research-status Report
空中食物資源の分布とその利用の解明:「空のニッチ」を把握する
Project/Area Number |
17K19429
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山口 典之 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (60436764)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 広芳 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター(日吉), 訪問教授 (10111486)
辻本 浩史 京都大学, 防災研究所, 特定教授 (40747490) [Withdrawn]
井上 実 一般財団法人日本気象協会, 担当部長 (60578954)
森 さやか 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (70623867)
佐々木 寛介 京都大学, 防災研究所, 特定准教授 (10578967)
|
Project Period (FY) |
2017-06-30 – 2019-03-31
|
Keywords | 空中生態学 / 資源分布 / 気象解析 / 空のニッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では空域を専門的に利用する鳥種であるハリオアマツバメを対象に、空中に存在する資源の分布とその特徴を定量的に測定すること、空中資源をハリオアマツバメがどのように利用しているかを明らかにすることを主要な目的としている。調査にあたってはサンプル個体を確保するために、巣箱を架設して本種の繁殖を誘引するという、本種を対象とした新しい試みも実施する。 (1) 2017 年度に 10 個の大型巣箱を調査地に架設した結果、高い利用率でハリオアマツバメが営巣した。巣箱の形状や具体的な利用率、繁殖成績等は今後学会発表、論文発表等にて公表を予定している。 (2) 局所気象測定ドローンを調査地で試験運転し、高度 500m までの風況の鉛直プロファイルを計測した。その結果必ずしも高度変化に従った一定の風力・風向勾配があるわけではなく、調査地の空中では複雑な風況が観測されることを確認した。この結果は、空中餌資源の分布が複雑であることを期待させる。飛翔昆虫採集ドローンは、開発を継続中である。2018 年度の運用を目指し検討を重ねている。 (3) 複数のハリオアマツバメに GPS ロガーを装着し、詳細な移動パターンを計測することに成功した。また捕獲個体から空中で採食した餌サンプルを多く採集することに成功した。これらの成果については、2018 年度のサンプルも加えた上で、その利用範囲や移動速度、地上環境との関連性などを今後調査し、学会発表や論文にて公表を予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
巣箱の架設による調査個体の確保、気象計測ドローンの運用、調査個体の GPS 追跡について概ね初年度の目標を達成することができた。特に巣箱による誘因では単年度で貴重な成果をあげることができた。飛翔昆虫採集ドローンの試験運転だけが予定通りにはいかなかったが、現在開発を進めており、2018 年度には野外調査で利用する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画にもとづき研究を推進して行く。巣箱は 2017 年度に表面化した問題を解決した上で 2018 年度も架設する。2018 年度は気象計測ドローン、飛翔昆虫採集ドローンを GPS 追跡と同じ時期に運行させ、実際の追跡個体が利用した「空のニッチ」の記述と、行動解析を最終目標とする。2018 年度が学会発表や論文公表を順次進めていく。
|
Causes of Carryover |
今年度の計画に沿って飛翔昆虫採集ドローンの開発を検討したが、市販ドローンに搭載するには過重量であり、適切な運用ができないという結論となった。そこで気象測定用の大型ドローンを活用し、そこに飛翔昆虫採集ユニットを取り付ける方針に転換した。頻繁なバッテリー充電と交換が必要であるが、現地に電源を確保できることになった。GPS 追跡は今年度にある程度の成果をあげることができたが、気象測定、飛翔昆虫採集とできるだけ同時的に実施することが重要となる。以上の理由から、飛翔昆虫採集ドローンの開発・本格調査、それに合わせての GPS 追跡調査を 2018 年度に集中的に実施することになり、そのための物品購入や旅費などの予算を繰り越し、使用することになった。 今年度途中での気象研究に関する分担者交代に伴い、旧分担者である辻本が購入した物品や既存設備は、同じ研究室の新任教員である佐々木が使用して研究を遂行した。そのため新分担者の佐々木は予算を直接的に使用する必要が生じなかった。
|